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「政治的中立性損なう」 美術展で茅ケ崎市教委、共催辞退

社会 | 神奈川新聞 | 2019年1月22日(火) 17:00

茅ケ崎市教委の名称が二重線で削除された美術展のパンフレット
茅ケ崎市教委の名称が二重線で削除された美術展のパンフレット

 茅ケ崎市内で開催されていた美術展に出展された一つの作品を巡り、同市教育委員会が「政治的中立性を損なう」ことを理由に、同展の共催を一時辞退していたことが22日、分かった。教職員らが出展する美術展で、作品の版画に描かれた「辺野古工事強行許さない!」「新基地反対」などの文字が「強い政治的メッセージ」と判断。市教委は作品を展示しないよう出展者側に求め、作品が取り外されると再び主催者に名を連ねた。

 美術展は、同市教委や寒川町教委、湘南教職員福利厚生会などが共催する「湘南教職員美術展」。現職の教職員やOBの創作活動の推進を目的に毎年開催されており、今年で35回目。17~22日の6日間、茅ケ崎市民文化会館で開かれ、絵画や彫刻、写真など約145点が出展された。

 市教委が問題視したのは、OBが出展した版画。米軍キャンプ・シュワブのゲート前(沖縄県名護市辺野古)の風景を思わせる作品の中には「辺野古の海埋めるな!」「9条守れ」といった文言が記されている。

 作品について、水島誠司市議(自民党茅ケ崎)が「一部の主義、主張を展示している」と市教委に指摘。作品を確認した市教委は、「(辺野古の)米軍基地建設や憲法の問題は社会でも意見が分かれており、作品には一方的な意見を示す政治的な強いメッセージがあった。美術展にふさわしくなく、展示は不適切」と判断した。同厚生会などを通じ出展者に作品を取り外すよう求めたという。

 これに対し、他の主催者からは「作品の中身は主催者として判断すべきでない」と継続展示を求める声も上がったが、市教委は「主催を続ければ、作品の文言にある主義主張を市教委が発信していると誤解される恐れがある。そうなれば市教委の政治的中立性を保てない」と結論づけ、19日以降、共催から外れた。

 その際、パンフレット約100部について、表紙に記載された「茅ケ崎市教育委員会」の文字の上に二重線を引いたという。

 市教委は21日、出展者から作品展示を辞退する申し出があったことを受け、「問題ない」と判断。再び主催者に名を連ね、会場では茅ケ崎市教委の名前が入ったパンフレットを再び配布した。

拡大解釈で越権行為


 美術・文化社会批評家のアライ=ヒロユキさんの話 作品は文化活動の産物で、政治的な行為には当たらない。茅ケ崎市教育委員会の判断は明らかに拡大解釈で越権行為だ。芸術や文化はいろいろな意見があってしかるべきで、自治体はその多様性を保つことも使命の一つ。行政が「政治的中立性」を理由に後援や主催を断る事例は各地で起きているが、一部の市民や政治家のクレームにより言論が封じられるという手法が共有され広まりつつあるように思う。こうした事態が続けば、社会の言論や表現の自由はますます狭められていく。

 
 

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