県立相原高校(相模原市緑区橋本)のシンボルとして親しまれてきた樹齢約100年のクスノキを守ろうと、市民団体が今月から署名活動に乗り出している。同校はリニア中央新幹線の中間駅整備に伴い、3月末に移転することが決まっているが、クスノキを所有する県教育委員会によると、移植は困難で今後の扱いは未定。市民団体は「リニア駅の開発に伴って伐採されかねない」と危機感を募らせている。
クスノキは1922(大正11)年の同校創立時に植えられ、高さ15メートル、幹周り4・7メートルの大樹。市の保存樹木にも指定されているが、県の調査で幹の一部に空洞が見つかり、昨年から周囲に人が立ち入れないよう柵が設置されている。
同校は3月いっぱいで、橋本駅前から職業能力開発総合大学校相模原キャンパス跡地(相模原市緑区橋本台4丁目)に移転するが、県や市によると新校への移植は樹勢の衰えから難しく、当面は現在の場所に残す方針。同校敷地では4月以降に神奈川県駅(仮称)の計画づくりが進められる予定で、駅周辺のまちづくり計画を担う市とクスノキを所有する県はそれに合わせて、保全について検討するとしている。
一方、地元住民らでつくる市民団体「橋本の緑と安心を守る会」などは今月5日、クスノキの保全などを求めて署名活動を始めた。
同会共同代表の吉田加代子さん(57)は「クスノキは生徒だけでなく、地域の人たちにも親しまれてきた。後世まで守り続けていく橋本地域の宝」と訴える。街頭などで署名を集め、3月をめどに市と県に提出する。
同会は昨年11月に結成され、メンバーらはこれまでもクスノキについての紙芝居を作って披露するなど保全を訴える活動を続けてきた。同会は同校の緑地保全や跡地を広域避難場所として引き続き活用することも求めている。
◆相模原市内におけるリニア中央新幹線関連の整備計画 品川-名古屋間を結ぶリニア新幹線は2027年の開業を目指して工事が進められており、県内には橋本駅前(同市緑区)に神奈川県駅(仮称)が建設される。市は、同駅の整備地である相原高校の敷地約10ヘクタールを含めた16ヘクタールを重点地区として、交通ターミナル、駅前広場、複合施設などの土地利用計画の想定案を示している。