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福祉避難所、ゲームで学ぶ 横浜・栄区が独自版

社会 | 神奈川新聞 | 2018年12月23日(日) 03:08

研修会で福祉避難所のゲームを体験する横浜市栄区の施設関係者ら=6月、同区役所
研修会で福祉避難所のゲームを体験する横浜市栄区の施設関係者ら=6月、同区役所

 災害時に高齢者や障害者らの要配慮者を受け入れる「福祉避難所」の開設・運営ノウハウを施設関係者に学んでもらうため、横浜市栄区は実際の場面を想定した独自のカードゲームを制作する。老人ホームや障害者施設などの協力で二次的に開かれる福祉避難所は、一般の避難所では生活困難な要配慮者を支えるが、定着はしておらず、近年の災害で必ずしも十分に機能していない。区はゲームを使った研修や訓練を通じて、災害関連死の予防につながる福祉避難所の役割をアピールしていく考えだ。

 「75歳。要介護2。転倒し泥だらけ」「85歳。要介護4。関節リウマチで歩行困難、車いすを利用」

 今月12日、栄区役所で開かれた福祉避難所ゲーム制作プロジェクトの会合。多様な症状や境遇の避難者が訪れる場面を示したカードの案を区の担当者が次々と読み上げた。実際のゲームでは施設の見取り図も用いながら、どこでどのような人を受け入れるかをグループで話し合ってもらう。

 せきが止まらない10歳児や夜泣きする乳児を伴っていたり、妻が妊娠中という男性が受け入れを求めてきたりと、施設にとって「想定外」の要素も加味。「視覚障害・聴覚障害のある人から物資の配布情報を得たいと相談が来た」「段ボールベッドが5個届いたが、間仕切りはない」といったイベントのカードも矢継ぎ早に出されるため、臨機応変さが欠かせない。

 地震の発生から5日後までを想定し、避難者とイベントのカード総数は100枚ほどになる見込み。福祉避難所が受け入れ対象としない近所の住民が訪ねてくるカードも用意され、受け入れるか拒むかの判断を迫られる場面も。プロジェクトの会合では、施設関係者から「状況によって対応は異なる。正解はない」との感想が漏れた。

 こうした状況や予期せぬ事態への対処法を学び、福祉避難所の開設や運営に必要な準備につなげてもらうのが、本年度中の完成を目指すゲームの目的だ。

 栄区は高齢化率が30%を超え、市内18区で最も高い。施設関係者の意識向上に向け、熊本地震で福祉避難所を開設した特別養護老人ホームの施設長を招いて研修を開くといった取り組みを重ねてきた。

 今年6月には、国際医療福祉大の町田和講師らのチームが考案した福祉避難所の運営ゲームを体験。これを基に想定条件や用語を整理し、横浜市の状況に応じて高齢者施設向けと障害者施設向けの2種類を作ることにしている。

 区の取り組みを支援する同大大学院の山下留理子准教授は「大規模災害のたびに福祉避難所の開設が課題となるが、災害関連死などで命を落としやすいのは要配慮者だ」とスムーズな開設に向けた準備の必要性を指摘。「ゲームの体験を通じて施設関係者が自分の判断や行動をイメージしながら意見を交わし、ジレンマを感じたりすることで、課題を抽出できるのではないか」と成果を期待する。

 ◆福祉避難所 高齢者や障害者、妊婦、乳幼児、難病患者らを対象として主に福祉施設に開設される。自治体が施設と協定を結ぶなどして確保し、災害や避難者の状況に応じて開設を依頼する形が多い。横浜市内では491施設が協定を締結済み。東日本大震災の際は福祉避難所の事前確保が不十分で機能せず、熊本地震では一般の避難所で拒まれた障害者を大学が急きょ受け入れ、福祉避難所としての役割を果たすなどの問題が浮上。内閣府は2016年4月、福祉避難所の確保や運営に向けたガイドラインを定めたが、取り組み状況や運用の考え方は自治体によって異なる。


避難者の境遇を示したカード。栄区が制作中のゲームでも、こうした状況が付与される見込み
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