澄み切った青空とは対照的な空気が、殺風景な取調室を覆っていた。観測史上、最も早く関東地方の梅雨が明けた6月29日。神奈川署特別捜査本部は、ある人物を任意で県警本部に呼び出していた。
元看護師の女性の被告(31)。2016年9月に横浜市神奈川区の旧大口病院(現・横浜はじめ病院)で起きた殺人事件の重要参考人だった。
特捜本部は、膠着(こうちゃく)状態を打破するには自供を得るしかないとの結論に至っていた。しかし、積み重ねた証拠を否定され、あるいは供述を拒まれたら、捜査は暗礁に乗り上げかねない。命運を左右する任意聴取だった。