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建築家・田根剛
【ひとすじ】アイデアで世界は変わる(上)

社会 | 神奈川新聞 | 2016年9月15日(木) 09:22

気鋭の建築家、田根剛さん
気鋭の建築家、田根剛さん

 「ひとは、夢があると前に進めるんです」。フランス・パリを拠点に活動する建築家、田根剛(37)は静かに口を開いた。

 若き天才の名が世界を駆け抜けたのは、2006年1月、26歳の時。イタリア出身のダン・ドレル、レバノン出身のリナ・ゴットメとともに考案したデザインが、100を超える応募の中で、最優秀賞に選ばれた。

 それはバルト3国の一つ、エストニアの文化都市・タルトゥに10月1日にオープンする「エストニア国立博物館」の設計だ。

 受賞を機に、ドレルとゴットメと一緒に、互いの名前から1文字ずつを取り、建築家ユニット「DGT.(DORELL.GHOTMEH.TANE/ARCHITECTS)」をパリに設立した。事務所はブラジルやイタリアなどから25人が顔をそろえる多国籍チーム。現在は20以上の建築や空間の演出などのプロジェクトを抱える。英語、フランス語を操り欧米や日本国内を奔走する。


サッカー選手が夢



 少年時代はサッカー選手になることが夢だった。朝から晩まで公園で、ボールが見えなくなるまで追い掛けていた。1993年、中学1年生の時にJリーグが開幕。プロ選手たちが繰り広げる華やかなボールさばき、鮮やかなゴールシーンにくぎ付けになった。

 「いつか、あのグラウンドに」

 学校の部活動と並行し、地元・東京にあるサッカークラブに所属。時間の全てをサッカーに注いだ。中学3年生の時に、Jリーグ所属のサッカーチーム「ジェフユナイテッド市原」(現・ジェフユナイテッド千葉)のユース試験を受験。600人ものライバルたちを押しのけ、合格者の3人に名を連ねた。

 狭き門をくぐり抜け、立ったフィールドでは、攻めと守り、両方の要になるミッドフィルダーを務めた。チームには、ユース日本代表として世界で戦う酒井友之(37)がいて、その存在に刺激を受けた。浦和レッズの阿部勇樹(35)、サンフレッチェ広島の佐藤寿人(34)ら元日本代表選手で、現在も現役を続ける面々が後から加入すると、レギュラー争いは熾烈(しれつ)を極めた。

 Jリーガー、そして日本代表へ。開きかけた扉は、長く続く足のけがの前に断念を余儀なくされた。

 「プロになることができないなら」。18歳のとき、サッカーと決別した。

「建築」へと足が向く



 「サッカー一筋でやってきたので、離れてやりたいと思えることはなかった。でも浪人をするのもイヤだった…」

 もんもんとした日々を送る中で、「建築」へと足が向くきっかとなったのは、通っていた東海大学付属浦安高等学校(千葉県浦安市)の9割が進学する東海大学が北海道にもキャンパスを持っていたことだった。

 「都会暮らししか知らなかった。自然に囲まれた生活を経験してみたかった。大自然の中で1人暮らし。いいなぁって」

 芸術工学部建築学科に進んだが、「家は住宅かな。ビルは建物かな…と。建築の知識はゼロでした」。

 これはまずいと出向いた図書館で、スペイン・バルセロナにある建造物「サグラダ・ファミリア」などで知られる建築家、アントニ・ガウディの作品集を見て、「なんだこれは!」とショックを受けた。一気に魅了され、進学後は建築の世界にのめり込んでいった。

 「『敷地の中で求められていることを考えてほしい』と設計課題が出た時、自由で楽しいなぁと思いました。頭の中で宇宙のように広がる想像。浮かんだアイデアを模型にしていくことが楽しかった。空間を創造していくことは、サッカーと似ているなぁと気が付きました」


「場所の記憶」を生かしたエストニア国立博物館
「場所の記憶」を生かしたエストニア国立博物館

欧州に豊かな文化を感じ


 大学2年生の夏に初めて海を渡り、スペイン、フランス、イタリアの建築を見て回る旅に出た。欧州の街並みに豊かな文化を感じ、海外への思いが強くなった。

 3年生になった2000年には、スウェーデンにあるシャルマス工科大学に交換留学。日本と韓国が初のサッカーワールドカップ(W杯)開催ムードで沸き立つ02年春に大学を卒業しデンマーク王立アカデミー留学のため日本を飛び出した。巨匠、ヘニング・ラーセンで働き約1年後、イギリス・ロンドンにあるデビッド・アジャイエのオフィスに転職。そこで、フランスの建築家ジャン・ヌーべルの事務所にいた、今のパートナー、ドレルとゴットメと出会う。05年にエストニア国立博物館の国際コンペティションに応募した。

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