
【時代の正体取材班=田崎 基】犯罪を計画段階で処罰するいわゆる「共謀罪」法案の国会審議が大詰めを迎えている。2月に発足した市民団体「未来のための公共」(未来公共)の中心メンバーで、大学生の馬場ゆきのさん(20)は今月11日、東京・渋谷にいた。「政治について考え、行動することは未来への責任だと思います」。駅前を埋める群衆に向け言葉を放った。語り掛けることこそが「萎縮」の壁を破るのだと信じてー。
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初夏の風が吹き抜ける渋谷駅前。買い物客や観光客が行き交うハチ公前広場の一画に、カラフルなプラカードを手にした参加者が詰め掛けていた。
「共謀罪に反対する緊急渋谷街宣」と銘打って未来公共が企画した集会だった。
最後のスピーチに馬場さんが立った。額に汗を浮かべ、群衆を見渡す。声が上ずる。用意していた原稿をスマートフォンに表示させ話し始めた。
「日本は民主主義の国です。民主主義とは選挙だけで全てを決めることではありません。政治家は絶えず、主権者である国民の声に耳を傾けながら、政治を進めていかなければならない。それが民主主義です。そして私たち国民は主権者ですから、政治について声を上げることは私たち誰しもに与えられている権利です」
緊張を打ち消すように少し早口で一気に読み上げ、人垣を見渡し、一息つく。

「権力は国民の側から声を上げ続け、常にチェックしていないとすぐにおかしな方向にいってしまいます。だから政治に関して未熟ではあるけれど、いまの政権の独裁に対して、おかしいと言おうと思って、2月に初めて、国会前で行われていた抗議集会に足を運びました」
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おかしな政治が行われる。そう感じたのは2013年、特定秘密保護法のニュースをテレビで見た時だ。まだ高校生だった。家族で話題になった。「知る権利が奪われるのではないか」。翌年、同法は施行され、15年には安全保障関連法制が焦点となった。若者たちが反対する集会が連日報じられた。
「その時も私はテレビで見ているだけだった。これだけ反対運動が盛り上がっているし、政権支持率も下がってきたし、成立させることはないだろうと、そう思っていた」
漠然とした推測はしかし、あっけなく裏切られた。
そして気付く。「日本の民主主義は壊れているんじゃないか。安倍首相のやり方は間違っている。説明も不十分でかつ強引。おかしいことが起きている」
そして自問した。「おかしさに直面し、私は何かできただろうか」。自分もまた、黙っている大勢の中にいる一人ではないか。
16年7月の参院選挙。憲法改正の発議と密接に関係する「改憲勢力3分の2」を衆参で満たす重要な選挙だった。野党議員を応援しようと、ボランティアに参加し電話をかけた。それが初めての政治参加だった。
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渋谷ハチ公前広場を数千人の群衆が埋める。視線が向けられ、表情がこわばる。振り切るように息をつき、また語り出す。

「私は声を上げることは当たり前であるべきだと思います。ですが、政治について話すのはタブーのような風潮が実際にあります。そのせいか、国会前に初めて足を運んだ時はすごく怖かったです」
2月のことだ。