
養蜂愛好家で秦野市室町で写真館を営む原憲三さん(61)=中井町井ノ口=はこの夏、「ちょっと得した気分」に浸っている。新しい女王バチの誕生で旧女王バチが働きバチを引き連れて集団引っ越しする「巣別れ」に遭遇。購入すれば4万円は下らないというセイヨウミツバチの1群(推定2万5千匹)をそっくり、手作りの巣箱に招き入れることに成功したからだ。
小田急線秦野駅にほど近い写真館。その4階の天井裏にミツバチの群れが集まっているのに原さんの家族が気付いたのは、7月の上旬のことだった。近くで巣別れした集団が、屋上近くの外壁にある通気口から入り込んだとみられる。
原さんは今年4月、埼玉県の養蜂家からセイヨウミツバチ1群を購入し、自宅近くの畑で養蜂を始めたばかりだが、すぐに「巣別れだ」と直感。昨年から全国的に不足が指摘されるミツバチを捕獲するチャンス、と色めき立つ。
ハチミツ入りの手作りの巣箱を屋上に設置する“おびき寄せ”作戦を試みると、1群は「新天地」が気に入ったようで、天井裏から巣箱にすんなり移動したという。
原さんはこの時点で、購入した1群を人工的に巣別れさせる技術を駆使して4群にまで増やすことに成功。今回の自然の状態での巣別れ分も含めると、計5群の「オーナー」となった。
巣別れは巣から大量のハチが一度に飛び出すため、驚いた住民から行政に駆除要請が出されることもしばしば。だが、中井町議も務める原さんは「本来は子孫を残そうとする命の営み」と指摘。「今後も養蜂を続け、その大切さを子どもたちに伝える何らかの機会を設けたい」と話している。
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