元県職員の戦争体験をまとめた冊子「つたえたい想い~神奈川県職員の戦争体験を若い世代へ」がこのほど、出版された。グアム島での激戦や横浜大空襲の様子などが克明に描かれ、戦争の悲惨さと平和の大切さを若い世代に語り継ぐ狙いがある。
グアム島の激戦を経験した前場喜六さん(83)は戦闘訓練を受けないまま、前線に連れて行かれた。戦友を次々と失い、「月日の記憶もなく、明日の生命の保証もなく、ただ密林の中を水と食料を求めてさまよい続ける」と、非情な戦争の実情を書き記した。
台湾で終戦を迎えた朝日信義さん(85)は敵飛行機の電波探知に従事。聞き取り調査に「いま考えても何のための戦争だったのか、失ったことの大きさに胸が痛くなります」と語った。
冊子を出版したのは、県職員退職者約1500人でつくる「退職者こだま会」(生方武羅夫代表幹事)。会員に呼び掛け、68歳から90歳までの23人(故人1人を含む)が体験を寄せた。若手職員との座談会、戦時下の県政についての解説も加え、3部構成とした。
座談会では生方さんが、戦時中の思想、教育統制、徴兵事務を県が担ったことを説明。「戦争に非協力的な人は非国民とされた。そんなことが二度とあってはならない」と若手職員に語り掛けた。当時の県政については、戦時下最大の言論弾圧とされる横浜事件を県特高警察が担ったことなどが解説された。
生方さんは「戦争を風化させないためにも、ぜひ若い世代に読んでほしい」と話している。
冊子はA5判で127ページ。500部作製。1部500円(送料100円)で、希望者に販売している。問い合わせは退職者こだま会電話045(212)3179。
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