【時代の正体取材班】29日に参院本会議で審議入りしたいわゆる「共謀罪法案」について学ぶ催しが県内でも開かれている。「内容を知ったら賛成できないはず」。言論の府で展開されるすれ違いの議論。立法の必要性すら破綻しているという根拠を分かりやすく伝えようと市民が動きだしている。
同日午前、開成町の町民センター。畳敷きの会議室室に30人余りが所狭しと集まった。
テーマは「『共謀罪』ってなに?~ワタシの自由を手放さないための勉強会」。講師の「明日の自由を守る若手弁護士の会」(あすわか)の伊藤朝日太郎弁護士(37)が詳しく分析した。
政府が立法事実(法制定の根拠となる社会的事実)として説明する「国際組織犯罪防止条約」(TOC条約)の締結について「国連の立法ガイドにも共謀罪を必ず作らなければ締結できない、とは書いていない。むしろ締結のために共謀罪を立法した国はたったの2カ国。なにも立法措置を取らずに締結した国もある」と強調した。
また、「共謀罪法案はテロ対策とは無関係」で、既に日本はテロ対策の全ての国際条約について締結済みと解説した。にもかかわらず277もの罪について新たに共謀罪を作り、計画し準備行為をしただけで処罰する共謀罪は「必要がない」と結論づけた。
伊藤弁護士は「それでもやはり『あしき内心は処罰すべき』と考える人もいるだろう。しかし問われているのはその発想だ。善良な市民とそうでない市民を分けていいだろうか。内心を処罰するには徹底的な監視や調査が必要になるだろう。一体どこまで安心を求めたら満足するのか。私たちはそうした社会を望んでいるだろうか」と語り掛けた。
イベントを企画した綱島麻実さん(41)は「今日これだけの人が集まった。そのことが法案を止める力になる。私が私として生きていくために萎縮しないことが大切」と呼び掛けた。
参加した自営業の男性(38)は「もし法律が成立してしまっても廃案に向けた行動を続けなきゃいけない。重要なことは、口を閉ざしてはいけないということ」と話していた。
27日夕方には、JR藤沢駅北口のサンパール広場で国会審議を再現する音読劇「コッカイオンドク」が開催された。
市民が金田勝年法相や安倍晋三首相、追及する野党議員を演じ、国会で審議が尽くされたか、について検証した。手には国会審議を書き起こした台本が握られていた。
逢坂誠二議員(民進党) 「一般の方々は、共謀罪の嫌疑の対象にならないと100%言い切れますか」
金田法相 「対象とはならない、ということであります」
逢坂議員 「告発という制度があります。告発は誰でもできる制度であります。告発によって共謀罪の嫌疑のある方、これは何人も告発で訴えられることはない、こう言い切れますか」
金田法相 「告発をされた場合でも嫌疑がなければ、捜査の対象にはなりません」
逢坂議員 「捜査をしなければ、嫌疑があるかどうか、分からないんじゃないですか」
金田法相 「えー、嫌疑がなければ、捜査の必要性はない、ということになるのであります」
逢坂議員 「大臣、嫌疑がないことはどうやって分かるんですか」
〈大臣、官僚と相談中〉
委員長 「時間をとめてください!」
5月8日の衆院予算委員会の一場面だ。
音読劇を企画した藤沢市の朝倉優子さん(53)は