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ブラジル・アマゾンの日系社会で、横浜出身の女性が日本語の普及活動

社会 | 神奈川新聞 | 2010年5月7日(金) 10:21

ブラジル・アマゾンの日系社会で、日本語の普及に取り組む女性がいる。横浜市青葉区出身の中瀬洋子さん(53)。日本語学校の現場教師を指導する傍ら、日本語教育80年の歩みを振り返る文集作りに携わった。

力強い日本語だった。「明治43年3月…」「山形県南村山郡…」。昨年6月、アマゾン奥地の日系人移住地。深紅のハンモックに腰掛けた日系1世の男性が、生年月日と本籍をそらんじ始めた。高齢を感じさせない歌声で「上を向いて歩こう」。続いて、開拓に注いだ異国での半生を振り返った。

郷愁あふれる語り口。中瀬さんは一言一句を胸に刻み込んだ。それから7カ月後の今年1月、男性の訃報(ふほう)が届いた。99歳だった。

中瀬さんは県立ひばりが丘高校(現・座間総合高校)の元日本語教師。言葉の壁にぶつかり、文化や習慣の違いに戸惑い、時にはアイデンティティーに悩む外国籍の若者と向き合ってきた。だが、教え子たちの葛藤(かっとう)を推し量ることしかできない。募るもどかしさに「同じ境遇を体験したい」と一念発起。2008年7月、国際協力機構(JICA)のシニアボランティアとして、ブラジル北部の都市ベレンに赴任した。

アマゾン各地の日本語学校を飛び回る日々。日本語に寄せる1世の思いに心を打たれた。遠く離れた祖国とのつながりを感じさせ、親密な人々との大切な思い出を呼び起こす、単なる言葉以上の存在。日常的に交わされる日本語はアイデンティティーのよりどころであり、日本語教育に心を砕いてきた成果だった。文集作りの企画が持ち上がり、編集メンバーに名を連ねた。

飛行機に揺られ、木造船でアマゾン川を渡る。四輪駆動車の窓ガラスに頭をたたきつけながら、赤土の泥道を駆け抜ける。日系人を訪ね歩く取材は、決して楽ではなかった。だが、1世の高齢化が進み「話を聞ける最後の機会」との思いが後押し。異国で懸命に生きてきた1世に、日本の教え子たちの姿を重ね合わせた。

完成した文集のタイトルは「アマゾンの学び舎(や)」。点在する日本語学校や、かつて学校が開かれていた移住地の姿を紹介している。

「ダブルリミテッド」。日本語も母語も身に付かない外国籍の子どもたちが、日本各地で増えている。

手をこまねいてはいられない。「日本語教育の充実、ポルトガル語との両立を成し遂げた日系人の経験がヒントになるのでは」。親の姿勢、そして受け入れ側の社会のありようを問う中瀬さん。さまざまな国の人々が自らの文化を守りながら融合し、新たな文化が生まれる社会、自分が自分らしく生きられる社会―。そんな日本を願う。

帰国は7月。2年間のブラジルでの日々が日本でどう生かせるか、今は分からない。それでも変わらぬ思いはある。

「異なるものと交わることは素晴らしい。その楽しさ、豊かさを若い人たちに伝えたい」

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