
ミカンの生産が盛んな大磯町、二宮町の農家に長く続けてもらおうと茅ケ崎市のNPO法人が本格的に動き始めた。「みかんの木」のオーナーとなる市民や企業を募り、収穫体験をしてもらう。成果はドレッシングやジャムなどの魅力的な製品にして還元する。農家の労働力を軽減する上、安定的な収益も期待できる仕組みづくりを広めることで、湘南のミカン畑の風景を守っていく。
国の統計では、県内のミカン農家はピーク時の1975年には西湘地域を中心に8688戸(栽培面積4010ヘクタール)あったが、後継者不足などで2005年には2854戸(同1430ヘクタール)と大幅に減少しているのが現状だ。
湘南エリアを核に持続可能な農業を提案しているNPO法人「湘南スタイル」(藁品孝久理事長)は県農業技術センター(平塚市上吉沢)や、まちづくり工房「しお風」(二宮町二宮)などと対策を検討してきた。
導入するオーナーシップ制度は、消費者に年間3万円程度でみかんの木1本のオーナーとなってもらい、農家の指導を受けながら収穫作業などを行う。摘み取った約400個分のミカンはそのまま食べるだけでなく、湘南スタイルと連携する地元企業などがアイスクリームやアロマオイル、香水などの製品に無駄なく加工して提供する。
オーナーにとっては農業体験が楽しめるほか、ミカンの恵みも存分に堪能できる。しかも農家は収穫作業の手間が省ける上に、市場を通さないために収入も安定。メーカー側も売れ残りのリスクを抱えずに製造できる。「かかわる人すべてが喜ぶ全く新しい発想だ」と藁品理事長は胸を張る。
先月23日には、すでに完成したみかんドレッシングやアイスなどの試食会を大磯町のホテルで開き、地元の商業関係者らにお披露目し、好評を得た。企業オーナーにレストランの料理や土産品として出してもらうなど「湘南みかん」のブランドを育てていく構想も描く。
手始めは大磯町の農家1軒が参加し、ことし5月ごろから限定100本でオーナーを募っていく。しお風の神保智子代表は「11~12月のミカン狩りのシーズンにバーベキューを行うなど皆が交流できる企画も考えたい。まずは湘南からオーナーをたくさん増やし、ミカン農家を元気にしていきたい」と話している。
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