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天皇生前退位考 島薗進東大名誉教授が語る 
時代の正体〈469〉権威主義の呪縛今も(下) 国体論より人間性を

社会 | 神奈川新聞 | 2017年5月13日(土) 10:20

しまぞの・すすむ 宗教学者。1948年生まれ。東大名誉教授。上智大大学院実践宗教学研究科教授。専門は日本宗教史。日本宗教学会元会長。近著に「近代天皇論」(共著、集英社新書)、「国家神道と日本人」(岩波新書)ほか。
しまぞの・すすむ 宗教学者。1948年生まれ。東大名誉教授。上智大大学院実践宗教学研究科教授。専門は日本宗教史。日本宗教学会元会長。近著に「近代天皇論」(共著、集英社新書)、「国家神道と日本人」(岩波新書)ほか。

【時代の正体取材班=田崎 基】「陛下一代に限って退位を認める」特例法案が19日にも国会に提出される。2016年8月8日の「お言葉」に端を発する生前退位問題。一応の決着をみるかのようだが、政府は本来直視しなければならない数々の問題を自覚しながら、看過しようとしている。権力の思惑を、国家神道研究の泰斗、島薗進東大名誉教授が照射する。


 今後、皇位継承が難しくなってくるのは明白だ。明治以前は側室を認めていた。明治天皇も大正天皇も側室から生まれている。だが大正天皇のときから一夫一婦制となり戦後の皇室典範では側室を認めなかった。日本が西洋に習って近代国家を目指す上で皇室だけを一夫一婦制からはずすわけにはいかなかったのだ。この時点で男系を維持することが現実的に困難となる。皇位継承の重大問題をずっと先送りしてきた。

 現行制度のままでは皇位継承が困難になるということが2000年代に入り明瞭になり、当時の小泉純一郎首相が検討を始め、2005年には有識者懇談会が女性・女系天皇の可能性についても言及し一定の方向性をまとめた。

「万世一系」の規定


 継続的な皇室の維持をまともに考えるのであれば、今回の生前退位の議論と合わせて、女性・女系天皇についても実現性を検討し、皇室典範を改正するのが筋、ということになる。

 だがとにかく「皇室典範を変えたくない」という方々がいる。

 大日本帝国憲法(明治憲法)下では、「国体」(天皇を中心とした体制)の方が憲法より上位に位置付けられていた。いまでも「皇室法」と言わず「皇室典範」と呼称しているのは憲法と横に並ぶ地位という思いが戦後に残っていたためだ。

 近代憲法論においては、全ての法に先立ち、あらゆる法の基になるのが憲法であるが、日本では国体の方が先にあったというわけだ。つまり天照大神と皇室を尊崇する神話的国体論が憲法より上位にあった。


島薗進さん
島薗進さん

 大日本帝国憲法第1条には「大日本帝国ハ万世一系ノ天皇之ヲ統治ス」とある。この「万世一系ノ天皇」について規定するという高い地位にあったのが皇室典範だった。

 しかし昭和の皇室典範で法律と同格とされた。それでも名前を保持し、少しでも「神聖な天皇」という要素を残そうとし、「国体護持」を堅固にするという観点から生前退位を認めなかった。

 このようにして

 
 

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