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坂本弁護士一家 遺体発見21年
正義貫く姿たどる 後輩弁護士、現場慰霊へ

社会 | 神奈川新聞 | 2016年9月10日(土) 11:18

坂本弁護士一家の救出活動を振り返る藤塚さん(左)と相曽さん=横浜市中区の横浜法律事務所
坂本弁護士一家の救出活動を振り返る藤塚さん(左)と相曽さん=横浜市中区の横浜法律事務所

 オウム真理教幹部らに殺害された坂本堤弁護士=当時(33)=の後輩に当たる若手弁護士が10、11の両日、遺体発見現場を訪れて一家の冥福を祈る。亡くなった龍彦ちゃん=同(1)=と同じ年に生まれた弁護士もおり、正義を貫いた先輩の生きざまをたどる考えだ。「事件の教訓を自分たちの世代にも伝えたい」。遺体発見から21年、事件の風化も懸念される中で思いを新たにする。

 「弁護士の危険が現実になった事件。現場を訪れることで、気持ちが引き締まると思う」。坂本さんを知る同僚らとの現地入りを前にこう語るのは、藤塚雄大弁護士(29)と相曽真知子弁護士(27)。弱い立場の側に立って活動したいと法曹の道を志し、1月に坂本さんと同じ横浜法律事務所に入所した。

 一家の遺体は殺害から5年10カ月後の1995年9月、新潟、富山の山中と長野の湿地帯で発見された。教団幹部は見つけにくいよう坂本さん、妻都子(さとこ)さん=同(29)、長男龍彦ちゃんを別々の場所に埋めたとされる。

 藤塚さんは「遺体発見はニュースで知っていた」が、龍彦ちゃんと同じ88年生まれの相曽さんは「学生時代、弁護士を志したときになってから知った」という。事務所にとっても、龍彦ちゃんが生きていれば同学年となる弁護士が入所するのは初めてだ。

 2人にはこれまでも、先輩の在りし日の姿に思いをはせる場面があった。今年4月、憲法の大切さを訴える市民劇が7年ぶりに復活。87年から毎年、上演されてきた劇には坂本さんも出演していた。市民とともに憲法を取り巻く問題を伝えられることに魅力を感じた2人も参加。学生や主婦らほかの出演者と稽古を重ね、一つの舞台を作り上げる中で、市井の人々とともにあろうとする坂本さんの姿勢を感じた。


憲法劇の舞台に立つ坂本堤弁護士(憲法劇上演実行委員会提供)
憲法劇の舞台に立つ坂本堤弁護士(憲法劇上演実行委員会提供)

 市民とのつながりを大切にしながら、オウムの信者脱会支援に熱心に取り組んだ坂本さんの活動はしかし、一家3人の命が奪われる悲劇となる。事件を教訓に、業界全体で弁護士への不当な暴力を防ぐ対策が進んだ。

 それでも、坂本さんの同僚だった小島周一弁護士(59)からは「弁護士は足が震えても、一歩を踏み出さなければいけないときがある」と教えられた。2人は遺体発見現場であらためて胸に刻むつもりだ。

 「弁護士は社会的正義の実現や基本的人権を尊重する役割を負う立場。妨害に屈してしまえば、社会の中で大切にされている価値が守られなくなってしまう。先輩の気概を引き継いでいきたい」

 

坂本弁護士一家殺害事件 1989年11月4日未明、オウム真理教の反社会性に気づいて信者脱会支援などに取り組んでいた坂本堤弁護士が、妻都子さん、長男龍彦ちゃんとともに横浜市磯子区の自宅アパートで殺害された。同僚らが救出活動を続けたが、地下鉄サリン事件後の95年9月6日、坂本さんが新潟県大毛無山で、都子さんが富山県僧ケ岳で遺体で発見された。龍彦ちゃんの遺体は同10日に長野県の湿地帯で見つかった。確定判決によると、一家殺害は坂本さんの活動を排除するために教祖の松本智津夫死刑囚(教祖名麻原彰晃)が指示し、教団幹部ら6人が実行した。後に刺殺された1人を除く5人全員の死刑判決が確定している。

 
 

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