
パラリンピックスポーツを通じて障害とは何かを考える体験授業がこのほど、藤沢市片瀬の市立片瀬小学校で開かれた。講師を務めたのは、車いすバスケットボール元日本代表の根木慎志さん(52)。約90分間の授業で、アスリートが伝えたかったこととは-。
ゴールに向かい、必死に車いすを走らせていく。「難しかったけど楽しかった」「最初は混乱したけど面白かった」。操作に四苦八苦しながらも笑顔を浮かべる子どもたちに、根木さんは「失敗しても、できなくてもいいんだよ。一生懸命やり続けること、楽しむことが素晴らしいことなんだ」とほほ笑んだ。
体験授業「あすチャレ!スクール」は、日本財団パラリンピックサポートセンターが主催し、昨年春にスタート。県内初開催となった20日は、同校の5年生147人が参加し、車いすバスケットボールに初めて汗を流した。
根木さんは高校3年生の時、交通事故で脊椎を損傷し、車いす生活になった。「事故に遭うまで、できないことは恥ずかしいと思っていた。だから、当時はできていたことができなくなった自分を恥ずかしいと思った。夜になると一人で泣いた」と明かし、こう呼び掛けた。「でも、違った。障害は、社会がつくり出すもの。みんなが応援したり、助けてくれたりすることで障害はなくなる」
例えば、車いすで階段を上がれなくても、車いすを持って一緒に上ってくれる友だちがいたら障害は消える。意識の変化は社会全体を変えていくと訴えた。

20歳で競技に出合い、36歳の時にはパラリンピックのシドニー大会にキャプテンとして出場。「周りの人は『かわいそうな人』という目で見ていたけど、1本のシュートで、そのまなざしが『憧れ』になった。スポーツの力で社会は大きく変わると思った」と言う。現在は同センターの教育プログラムのプロジェクトディレクターを務める。2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて、全国の小中高千校を回る予定だ。
授業の最後、子どもたちとハイタッチを交わした根木さんは言った。「お互いの違いを認め合い、誰もが輝ける社会を目指していく」