県内で2016年に起きた山岳遭難は111件137人に上り、件数・人数ともに過去最悪になった。滑落などによる死亡・行方不明者は16人で前年より7人増加。昨夏の「山の日」制定で関心が再び高まる中、新緑のベストシーズンを迎える。ゴールデンウイーク(GW)は入山が多く、関係者は低山であっても油断せず、計画を立てた安全登山を目指すよう呼び掛けている。
県警地域総務課によると、16年に県内で発生した山岳遭難の件数(人数)は111件(137人)。これまで過去最多だった14年の97件(131人)を更新した。死亡者は5人増の14人、行方不明者は2人増の2人、重傷者は3人増の23人など深刻化した。
遭難原因は「道迷い」が56人と最も多く、「滑落・転落」29人、「転倒」18人、「疲労」16人と続いた。年齢別は70代以上36人、50代27人、60代22人、40代19人の順。40代以上の中高年が依然多く、全体の約7割を占める傾向は変わらない。
一方、リスクが高いとされる単独行の遭難は7件増の43件になった。
観光地としても人気が高い伊勢原市の大山(1252メートル)では昨年4、5、7、11月、初心者とみられる典型的な遭難が相次いだ。若者らが午後から登り始め、下山途中で日が暮れて道に迷って救助要請。ヘッドランプも携行していなかったという。
遭難事例の中で登山届が出されていたのは17件、提出率は15%にとどまった。届け出促進策として、県警が15年4月に導入したネット活用による提出は1308件で倍増した。
管内で遭難が多発する松田署は、3月から西丹沢の登山口に向かう富士急行湘南バスと連携。2路線で車内に登山届を備え付けて、放送で提出を呼び掛ける取り組みも始めた。
県警地域総務課は「丹沢は都心から気軽にアクセスできる反面、地図を持たないなど準備や経験の不足による遭難が目立っている。所要時間を確認するなど、登山計画の立案は遭難防止の第一歩になるので提出してほしい」と話している。
◆登山届 入山者、目的の山やコースなどを記入する計画書。決まった様式はなく、登山口などに設置されているポストに用紙も置かれている。ない場合もあるので、メモ書き程度でも事前に用意したい。遭難発生時、効率的な捜索に役立つだけでなく、作成自体が危機管理のシミュレーションになるとされ、提出が推奨されている。