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特定秘密保護法案を問う(7)ピースデポ特別顧問・梅林宏道さん、情報は国民のもの、すべて公開が原則

社会 | 神奈川新聞 | 2013年11月21日(木) 10:01

NPO法人「ピースデポ」特別顧問の梅林宏道さん
NPO法人「ピースデポ」特別顧問の梅林宏道さん

国会審議がヤマ場を迎えている特定秘密保護法案。平和運動に取り組むNPO法人「ピースデポ」特別顧問の梅林宏道さんは、日米の情報公開法を用いて日本の安全保障政策を追跡してきた。「情報は国民のもの。その認識が希薄なまま秘密保護のみ規制を強めるのは危険だ」。権力が不都合な事実を隠す事例を目の当たりにしてきた経験が、そう言わせる。

成果が世に知られたのは2007年9月のことだった。

米国の情報公開制度で、イラク戦争に参加した米海軍の航海日誌を入手。03年、海上自衛隊の補給艦「ときわ」から米空母「キティホーク」へ間接的に給油されていたことが判明した。

テロ対策特別措置法に基づき、海自の任務はアフガニスタンを中心としたテロ掃討作戦の支援に限られていた。キティホークは給油直後にペルシャ湾に直行。法律に反し、海自が補給した燃料がイラク作戦に使われていたことを突き止めた。

米側だけでなく、ときわの航海日誌も開示請求した。だが、船の位置を示す部分はすべて墨塗り。「行動パターンが知られ、テロ攻撃を受ける恐れがある」というのが非開示の理由だった。同時期に活動した別の補給艦「とわだ」の日誌は保存期間内なのに廃棄されていた。

かくも権力は逸脱し、不都合な事実は隠蔽(いんぺい)される。

■根本的欠陥

そもそも情報とは誰のもの、何のためのものなのか。

「政府にはさまざまな情報が集まる。集めさせているのは国民だ。集まった情報を基に国民のために行政を運営していく。つまり情報は国民のもので、国民のためのもの。すべて公開されるのが原則だ」

外交・安全保障の分野では、交渉を有利に進めるため、あるいは国民の安全を守るため、一時的に公表しない方がいい情報はある。それも将来的にはすべてオープンにされなければならないと強調する。

政策判断が妥当だったか、不正はなかったかを点検する権利が国民にはある。秘密の保護が可能になるのは、その前提があってこそだ。権力の暴走の歯止めにもなる。機密管理と情報公開が両輪の関係にあるとされるゆえんだ。

だが、日本で情報公開法が01年に施行されてから10年余り、「情報公開の精神が政治家、官僚、国民の間に行き渡っていない。権力の側が情報をコントロールし、権力を維持するという『よらしむべし、知らしむべからず』の風土が根強く残っている」。

墨塗りの開示に不服を申し立てたが、「審査会は一般的な見解しか述べずに、海自側の判断は妥当と結論づけた。結局、最終的な判断は行政の長にゆだねられている」。それを日本の情報公開法の根本的な欠陥と断じる。

それはまた、何を秘密にするかを行政の長が判断するとした特定秘密保護法案にも共通する問題点だ。

恣意(しい)的な運用を防ぐため、行政機関のトップである首相が第三者機関的に関与することで合意をみた与党とみんなの党の修正協議も、民主主義の根幹をなす情報の扱いへの認識の錯誤を物語る。

■権利の放棄

安倍晋三首相は、国家安全保障会議(日本版NSC)を創設する上で「各国と情報交換を行う上で秘密の厳守は大前提」と法案の必要性を訴える。

梅林さんは法案成立を目指す背景に、戦後日本の平和憲法体制を変えようとする姿勢をみている。憲法を改正し、軍隊を持ち、集団的自衛権の行使を認め、海外で武力を行使できる「普通の国」になる-。

平和運動や核・軍縮問題に取り組む海外の団体や中国、韓国が抱く懸念はまさにそこにあった。「『ノーマル・ステート』、つまり『普通の国』になることを警戒している」。安倍首相が法案の先に目指す国の姿は、過去の歴史の足かせから自由になろうとしているかのように映る。

「植民地支配と侵略の記憶が消えていない韓国や中国では、こちらが思う以上に『昔の日本の復活』と反発し、それに日本も反応して関係が悪化する恐れがある。危惧する声は米国からも上がっている」

同じアジアの国々と信頼関係が築けていないまま、普通の国になることは許されるのだろうか。

歴史を振り返れば、立ち上ってくる暗い時代がある。戦前戦中、この国は言論を封殺し、異端者を厳しく摘発し、戦争に突き進んだ。「今この手の法律が出てくると、社会全体が非常に危険な方向に向かう」。情報を統制し、自由にものが言えない社会。「大きく秘密の網を掛けて規制する。『法に触れるのでは』と懸念が先行し、閉塞(へいそく)感が満ちてくる」

海自の間接給油を暴露した後、米国の情報公開請求の手続きが複雑になったという。「それまでは数日前に手紙を書けばよかったのに、2週間前に申請しなければならなくなった」。米側が配慮して日本が嫌がる情報を出したがらなくなったのでは、と推測する。

萎縮は絵空事でも、過去のものでもない。

だから民主主義の原点を何度でも説く。

「国が持つ権限も情報も国民のもの。行政運営のために政府が預かっているにすぎない。秘密を許すことは自分の権利を放棄することだ」

うめばやし・ひろみち

横浜市港北区に事務所を置くNPO法人ピースデポ特別顧問。長崎大学核兵器廃絶研究センター長。磁性物理学を専攻し東京大学大学院を修了後、大学教員を経て、平和運動や核・軍縮問題に取り組む。76歳。

【神奈川新聞】

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