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特定秘密保護法案を問う(6)学習院大大学院・安藤正人教授、懸念高まる「骨抜き」

社会 | 神奈川新聞 | 2013年11月8日(金) 10:42

安藤正人教授
安藤正人教授

行政の意思決定を記録に残すことを義務づけた公文書管理法が、今国会で審議中の特定秘密保護法案によって「骨抜き」にされる懸念が高まっている。国の活動を文書に記録、公開し国民の「検証の目」にさらすことは、民主主義社会の大前提だ。アーカイブズ(記録保存)学の観点から、学習院大大学院の安藤正人教授に問題点を聞いた。

■秘密自体が「秘密」

「行政情報は公開されるのが原則で、非公開はあくまで例外だ」と安藤教授は説明する。すぐに公開できない情報はゼロではないが、わざわざ特定秘密に指定しなくても、既存の国家公務員法や各省庁の規定の範囲内で十分に対応できるという。「例外を特定秘密として抜き出し、単独の法律で規制すること自体が異例ではないだろうか」

秘密指定を「行政機関の長」が行うとした点にも、安藤教授は疑問を呈する。指定の妥当性や、チェック機能が保証されないからだ。「どんな情報をどういう理由で、いつまで非公開にするのか。誰に相談することもなく指定できるのは、統一性がなく危険だ」

外交や防衛に関する秘密は当然あり得る。情報公開が進んでいるとされる欧米でも、第2次大戦中の公文書が近年になってようやく公開された例がある。ただ、少なくとも目録は公開されており、何が「秘密」なのかが分かるようになっている。「英国では、目録に『○○の法律に該当するので○年間は公開できない』と明記されていた」

一方、今回の法案では、秘密の存在自体が「秘密」とされる恐れがある。

■民主国家でなかった

2009年に成立し、11年に施行された公文書管理法は、国や独立行政法人の職員が適切に文書を作成、管理することを初めて義務づけた法律だ。同法の規定では、あらかじめ決められた保存期間を満了した公文書は、歴史的に重要なものとして国立公文書館(東京都千代田区)で永久保存・公開されるか、廃棄されるか、に分かれる。廃棄の際には首相の同意を必要とし、「勝手に捨てさせない」仕組みになっている。

同法の第1条は、公文書を「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」「主権者である国民が主体的に利用し得るもの」と位置づけた。「国の活動記録」である公文書が記録、保存、公開されているからこそ、行政運営を国民が検証・評価できる-との考え方が土台にある。

これは「知る権利」の前提でもある。情報公開と公文書管理とは「車の両輪」の関係にある。「両輪」のうち、情報公開法が施行されたのは01年、公文書管理法はわずか2年前の11年。ようやく「両輪」がそろったとき、こんなことが言われた。「民主主義国家にとって当たり前の法律が、今まで存在しなかった」

■行政活動の「検証」を

特定秘密保護法案では、秘密指定の上限を5年間とした。しかし、何度でも延長できるため、永久に解除されない可能性もある。批判を受け、政府は原案を修正して「30年を超えて延長する場合は内閣の承認が必要」との規定を追加した。

30年という数字は、作成から30年を過ぎた公文書は原則公開する、という「30年原則」の国際慣行に沿っている。それぐらいの時間が経過すれば、大抵の情報は鮮度が落ちるからだ。近年、15~25年に短縮した米英仏などの例もあり、日本の公文書管理法が具体的な年限を定めず「時の経過に応じ」という表現にとどまったことに、不十分との指摘もかねてある。

「30年原則は決して『30年は見せなくていい』ということではない」と安藤教授は強調する。「非公開というのは、あくまで猶予期間で、最後には公開されるべきものだ。行政活動は国民を代表してやっているのだから、それを『検証』する基本の材料を国民から隠すことはあり得ない」

■積極公開、外交を有利に

外交、防衛に関する過去の公文書を積極的に公開することは、むしろ今後の外交交渉を有利に進める材料にもなり得る、という専門家の意見もある。外交交渉の記録を先に公開した方に優位性があり、歴史もその国の視点で語られる可能性が高いからだ。

「公文書は、外交のヘゲモニー(覇権)を左右する」と話すのは、国立公文書館フェローの大濱徹也・筑波大名誉教授だ。

一方で「防衛省防衛研究所の検証によれば、関係公文書が本省から同研究所へ移管された割合は0・7%にとどまり、93%が廃棄されたといわれる」と指摘。「戦後日本の防衛政策の検証は、記録がほとんど残されていないために、米国立公文書館などにある米国側の資料に頼らざるを得ない現状だ」と、日本の政策検証が「米国の目」でしかできない実態を説明する。

「機密情報自体は問題ではないが、ある時点で過去の政策が正しかったのかどうかを検証できるようにしなければならない」と大濱名誉教授は強調する。

防衛秘密をめぐっては、防衛省が2011年までの5年間、約3万4千件の秘密指定文書を廃棄していたことがこのほど判明。07年から11年までの5年間に計約5万5千件が指定され、11年末の時点でも3万752件ある一方、02年に防衛秘密の指定制度を導入して以来、指定が解除されたのは1件だけにとどまる。

◆公文書管理法

公文書の適切な作成、管理、廃棄か保存かの判断を定めた法律。文書の取り扱いや保存期間などを管理簿に記載し、首相に毎年報告するよう省庁などに義務づけた。日本の公文書管理が欧米や中韓に比べ立ち遅れている実態を背景に、福田康夫首相(当時)の強い政治主導もあり、成立した。「消えた年金記録」問題や、インド洋でテロ特措法に基づく給油活動に従事した海上自衛隊補給艦「とわだ」の航海日誌が廃棄された問題、C型肝炎関連資料の放置など、公文書管理のずさんさが社会問題になったことも一因とされる。

【神奈川新聞】

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