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熊本地震「涙のドラマ」前編 大和晃さん両親が語る“激動の4カ月”

社会 | 神奈川新聞 | 2016年9月9日(金) 12:17

 7月24日、熊本地震の本震で行方不明となっていた、熊本学園大学4年、大和晃(ひかる)さん(22)が乗っていたとみられる車を、家族らが自力で見つけ出したというニュースは、瞬く間に全国へと広がり、驚きと同時に感動を呼んだ。本震で阿蘇大橋が崩落してから100日目、晃さんの車は橋から約400メートル下流で見つかった。家族らの執念の捜索で、奇跡的に発見することができた当時の様子について、晃さんの父・卓也さん(58)は時折、涙を浮かべながら気丈に語ってくれた。

 「この日は県内の山岳クラブの方が6人来てくれ、私たち家族と晃の友人たちなど総勢20人で現場に入りました。命綱をつけて約18メートルの崖を降り、ロープを使って川を横切らなければならない場所で、移動だけでもかなり時間のかかる厳しい捜索活動でした。午後になり、再び崖を登って帰る時間のことや体力の問題もありましたので、15時ぐらいから徐々に帰る準備を始めていたんです。ところが、知人の1人がさらに奥の河原まで入っていたので、戻ってくるまでちょっと待つことにしました。16時ごろでした。その知人が『黄色い車がありました!』と、我々のところに戻ってきたんです。すぐさま妻と山岳クラブの方たちの8人で、再び竹藪を越えながら、その現場へと向かいました」

 発見現場に到着した卓也さんの目の前には、大きな岩に囲まれるように川に沈んでいる車が。この瞬間、「晃の車に間違いない!」と、卓也さんは確信したそうだ。

 「車のドア部分がはっきりと確認できたし、水中から車のエンブレムも見つかりました。妻は涙を流しながら、岩と車の間に積もった泥を無心にかき分けていました」

 大きな岩に囲まれ、足場もないような危険な場所。とても卓也さんたちだけの力では、車を引き上げることなどできない。後は行政に頼むしかなく、この日は終了した。

 「この発見にはいくつもの偶然が重なりました。まず、山岳クラブの方たちがいなければ、この河原に入ることができなかった。それと梅雨が明け、川の流れが緩やかになったことで、水深が下がり、崖下に下りられる場所が若干できていた。さらに車の周りに大きな岩が囲むようにあったので、車が流されずにいた。このような偶然が重なったから見つけることができたのです」

 さかのぼること84日、本震から2週間後の5月1日に、警察、消防、自衛隊による捜索活動が打ち切られた。その2日後の5月3日から、卓也さん、母親の忍さん(49)、兄の翔吾さん(24)の家族3人は、晃さんを見つけるために自力で捜索活動を開始する。

 「まだまだ余震が続く状況のなか、危険な場所も多く、立ち入り禁止の場所もあったので、活動当初に私たちが入れたのは白川の下流域ぐらいでした。ただ、どんな形でもいいから晃を家に連れて帰りたい。何らかの手がかりになるようなものを3人で探し出し、本格的な捜索再開へのきっかけを作りたいという思いでした」(卓也さん)

 それから毎日、朝から現場周辺に行って捜索活動を続けた3人。母親の忍さんは川に向かって「晃! どこにいる!」と、呼びかけながら探していたという。3人は、その日に捜索した現場周辺の写真を何枚も撮り、家に帰ってから写真を拡大。何か手がかりになるようなものが写っていないか、毎晩食い入るようにチェックする日々が続いた。

 「私たちにできることは、一日も早く晃を見つけて家に連れて帰ってあげること。冷たい川の中で、たった一人で待っていると思うと、寂しいだろうし、おなかも空いているだろうと……。そんなことばかり考えながら探し続けました。おにぎりを作って川に流したりもしましたね」(忍さん)

 自力での捜索活動が続くなか、梅雨に入ると崩落した阿蘇大橋の周辺を流れる白川の様相が一変した、と卓也さんは振り返る。

 「川の流れがいつもとはまったく違う光景になりました。土砂が流れ込み、雨によって水量は増し、うねるように流れるようになったんです。川の中では岩がゴツン、ゴツンとぶつかりながら音をたてる。それは初めて聞くイヤ~な音でした。妻はその音を聞いてから、精神的にかなり参ってしまいましたね。晃がこの川の中にいると思うと……つらかったです」

 6月23日、阿蘇大橋の下流約5キロの白川で、晃さんの車(トヨタ・アクア)の一部である金属板が発見される。

 「テトラポッドのようなコンクリートに、黄色っぽい金属が巻きついた状態でした。色褪せていたので最初は半信半疑でしたが、川の対岸に回り、その金属を引き上げ、トヨタの販売店に持っていきました。確認してもらったところ、おそらく間違いない、と。これで晃はこの近くにいると確信しました」(卓也さん)

 7月3日、晃さんの友人やバスケットボールクラブの仲間たちが、『一緒に探しましょう!』と捜索現場に駆けつける。家族に対する支援の輪が広がっていく。
(後編へ続く)【女性自身】

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