
県は、看護教育の専門家を「看護実践教育アドバイザー」として、看護実習生の受け入れ病院に派遣する事業をスタートさせた。看護師養成数の増加に伴い実習受け入れ病院の確保が課題となっている中、病院側の負担軽減と指導の質向上を図るのが狙い。県独自の試みで、県内の看護職員養成力を高めていきたい考えだ。
看護学校が行う病院実習は教育課程の3分の1を占め、臨床現場での実践力を育てる重要な課程。しかし、病院側はベテラン看護師が指導者になり、多忙な通常業務をこなしながら実習生を受け入れているのが実情という。
新たな取り組みは「県看護師等養成機関連絡協議会」に業務を委託。10月下旬から、社会保険相模野病院(相模原市中央区淵野辺)と東名厚木病院(厚木市船子)に各1人のアドバイザーを派遣している。
相模野病院は、看護教員を16年経験した元東海大医療技術短期大教授の堀喜久子さんをアドバイザーに迎えた。
「最近は入院期間が短くなり、患者の重症化や高齢化が進む。ひと昔前の現場より厳しい。学生を指導する病院の負担感を軽くし、何をすれば指導者が学生とよりスムーズに関われるかを探っていきたい」と堀さん。病院側の実習指導者や学生と接しながら、来年3月末まで教育面の課題を整理して支援策を洗い出していく。
同病院は急性期医療に応える機能を拡大し、昨年4月に170床から212床に増床した。忙しさが増す中にあっても病棟や手術室など8部署にそれぞれ1人の指導者を置き、多い時期は全体で28人の学生を受け入れている。
同病院は「患者さんを見守りながら、学生に介入させ、患者との関係性を身に付けさせることは実はかなり高度なこと。違う視点から課題を洗い出し、適時、修正できれば学生のやる気も高まる」とアドバイザーのサポートに期待している。
2010年末の県内就業看護職員数は人口10万人当たり736・8人で全国最少。直近の12年末も、高い増加率を示したとはいえ2番目に少なかった。県は今後、事業の効果も見極めながら派遣先を増やしていく方針という。
【】