
江戸時代に発祥した南足柄市の国選択無形民俗文化財「足柄ささら踊」の担い手を増やし後世に引き継ごうと、同市の雨坪自治会が同好会を発足させた。歌詞に雨坪が登場するなどゆかりの伝統文化ながら、地元では継承されていなかった。一念発起した有志の住民たちは、長年市内で活動する保存会の協力を得て8月から本格的に活動する。
「雨坪踊り子は足柄小町 はでなけだしに玉だすき ヤレー玉だすき」
昨年4月の市政40周年記念イベント。雨坪自治会の役員らは別の地域の小学生が浴衣姿で扇子を両手に持ち、竹製の楽器「ささら」の音色に合わせて舞う姿に驚いた。話で聞いたことはあったが、実際に目にする機会はなかった。役員の一人、下田実さん(65)はそこで「歌詞に雨坪が盛り込まれているのを知った」という。
下田さんはすぐに「地元の住民が継承すべき」と考えて約20人で同好会を結成し、自ら代表に就いた。ダンスの指導歴がある武井喜代子さん(61)を中心に、11月開催の秋祭りに向けて8月から練習を始める。
市内の女性たちがメンバーで約60年の歴史がある「足柄ささら踊保存会」によると、ささら踊は宿場があった同市関本地区に旅人らによって江戸や木曽の伝統的な踊りがもたらされ、それらが組み合わされて生まれた。踊り手は主に18歳までの未婚の女性。明治中期以降は途絶えたが、戦後に地域の伝統芸能を掘り起こす活動が広まり、保存会を中心に引き継がれてきた。
扇子や手拭い、小太鼓など、踊り手が持つ小道具や歌詞は地区によって少しずつ異なる。同自治会が継承するのは「雨坪の扇踊」。保存会の内田幸子会長(70)によると、「他の踊りと比べ少し難しい」が、同好会のメンバーは意欲的だ。
下田代表は「子どもたちも積極的に受け継いでくれたらうれしい。この活動をきっかけに住民のつながりがさらに強くなれば」と話している。
同自治会の住民を対象にメンバーを募集している。問い合わせは、下田代表電話0465(74)3835。
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