
相模原市南区磯部の相模川で、夏の風物詩として知られる「帆かけ舟復元実演会」がことしから、新たに建造された舟で行われることになった。明治から昭和初期にかけ、生活物資などを運搬して地域の暮らしを支えた帆かけ舟。その歴史を後世に伝えていこうと、地域住民でつくる「磯部民俗資料保存会」が4年前から計画を進め、完成させた。9日の進水式でお披露目される。
復元実演会と銘打った帆走イベントは、30年ほど前に地元の農家から明治時代の帆が見つかったのがきっかけで始まった。保存会では毎年8月の第1日曜日、会員が船頭を務めるなどして磯部頭首工の上流で往時の雄姿を再現している。
ただ、これまでの帆かけ舟は、中央部分にいけすがある釣り舟を代用させたものだった。長年の使用で舟体が老朽化し、水漏れが激しくなったことから新たな帆かけ舟を検討していた。
新調にあたっては、会員らが資金を出し合い、木材から調達した。予算を考えながら原木探しに奔走。同市緑区の山林でようやく条件のあった原木が見つかった。
建造では、趣味で川舟を作った経験のある地元の家大工に協力を求めた。
完成した帆かけ舟は、これまでの代用舟よりも一回り大きい全長8メートル。樹齢100年前後のスギの大木から中心部分を加工した板をぜいたくに使った。帆柱はヒノキ材で長さが5・5メートルある。帆走会で見学者を乗せる、小型の舟も作った。
保存会の活動拠点、民俗資料館(南区磯部)の敷地で2日、初めて帆を張るなど最終チェックを行った。副会長の吉澤美芳さん(69)は「川面を切っていく音だけが聞こえてきて、何ともいえない気持ちになる」と、エンジン付きの舟とは別物の乗り心地をそう表現し、いまから進水式が待ち遠しそうだ。
田所輝夫会長(76)ら会員は、ようやく完成した帆かけ舟に気持ちを新たにする。「昔からやっていた帆かけ舟を維持し、地域に伝えていきたい」。60~70代中心の保存会だけに、新しい会員獲得にも力を入れていくという。
新調された帆かけ舟は進水式後の22日から7月中旬まで、相模の大凧(おおだこ)センター(南区新戸)で展示を予定している。
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