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坂本弁護士一家殺害事件:墓前でささげる鎮魂の歌、親交あった音楽家ら/神奈川

社会 | 神奈川新聞 | 2013年5月20日(月) 10:55

坂本堤弁護士一家への思いを胸に指揮した音楽家・寺井さん
坂本堤弁護士一家への思いを胸に指揮した音楽家・寺井さん

オウム真理教の信者脱会支援に取り組み、教団幹部に殺害された坂本堤弁護士一家が眠る円覚寺(鎌倉市)には、事件から23年が過ぎたいまも、それぞれの思いを胸に、慰霊に訪れる人が後を絶たない。19日、坂本弁護士の司法修習生時代を知る音楽家らが、祈りの歌声を響かせた。傍らには、静かに聴き入る母さちよさん(81)の姿もあった。

穏やかで、温かかった。「数回しか会ったことがないのに、思い出すといつも優しい気持ちになるんです」。音楽家・寺井一通さん(64)=長崎市=の記憶の中、若き日の坂本堤弁護士がよみがえる。

出会いは、1980年代半ば。冤罪(えんざい)被害者の支援コンサートを通じ、知り合った。弁護団の隅っこに、司法修習生だった坂本弁護士はいた。何を話したのかは覚えていない。脳裏に刻まれたのは「ひたむきで正義感にあふれる姿」だ。

坂本弁護士の妻都子さんが児童文学作家・灰谷健次郎さんの詩が好きだったと知ったのは、一家の遺体発見後。灰谷さんの友人だった寺井さんは、詩に曲をつけることを了承してもらい、以来20年近く、合唱曲「人を愛するということ」を歌ってきた。

胸にあったのは、一家の鎮魂と、「事件を風化させたくない」という思い。墓前で歌うことは長年の悲願だった。願いが実現したこの日、自身が主宰する市民合唱団と共に、母さちよさんの前で歌をささげた。

合唱後「このような形で歌わせていただき、ありがたい」とほほ笑んだ寺井さん。「歌を通して、事件のこと、坂本弁護士一家のことをこれからも伝えていきたい」。一家の墓に、再び手を合わせた。

◆「生きている気がして」

口調は変わらず、静かだった。「人を愛することや、命の尊さを織り込んでいた歌を歌っていただき、感動致しました」。坂本堤弁護士の母さちよさんは、ゆっくりと言葉を継いだ。

「救出活動される姿を当時、テレビで拝見していました」。この日、初めて会った寺井一通さんに、そう伝えられた。

「本当にお世話になりました。このような形でお会いできたことをありがたく思います」。合唱団を前に、さちよさんはそう語った。

この18年間、月命日と3人の誕生日の墓参りは、欠かしたことがない。「皆さん、気を遣われるでしょうから」と、訪問者が少ない時間帯を選んでいる。この日も合唱団が歌い終えた後、一人最後に、高台にある墓地からの階段を一段、一段、ゆっくりと降りた。

2年前に二十三回忌を終えても、息子をしのんで墓参してくれる友人らは多い。感謝の気持ちを表す一方で、ふと母として変わらぬ心情をもらした。

「事件発生から20年以上たっているけれど、私の中では『生きている』という思いが強いんです。今も3人が元気に生きてくれている気がするんです」

次の月命日まで16日。さちよさんは寺の門をくぐりながら、独り言のようにつぶやいた。

「また、来ます」

◆坂本弁護士一家殺害事件 オウム真理教の信者脱会支援などに取り組んでいた坂本堤弁護士=当時(33)、横浜弁護士会所属=、妻都子(さとこ)さん=同(29)=、長男龍彦ちゃん=同(1)=が1989年11月4日未明、横浜市磯子区の自宅アパートに押し入った教団幹部らに殺害された。5年10カ月後の95年9月、新潟県で堤さん、富山県で都子さん、長野県で龍彦ちゃんが遺体で発見された。殺害を指示したとされる松本智津夫死刑囚(58)=教祖名麻原彰晃=と実行犯計6人が殺人罪などに問われ、死刑判決が確定している。

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息子堤さん一家が眠る墓の近くで、母さちよさんと、坂本弁護士の元同僚の岡田弁護士は合唱を静かに聴いていた
息子堤さん一家が眠る墓の近くで、母さちよさんと、坂本弁護士の元同僚の岡田弁護士は合唱を静かに聴いていた

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