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自治体に拡大、藤沢市は見送り
本人同意なく通知 企業にマイナンバー  

社会 | 神奈川新聞 | 2017年4月17日(月) 10:21

今年から従業員の個人番号欄が追加された特別徴収税額の「決定通知書」
今年から従業員の個人番号欄が追加された特別徴収税額の「決定通知書」

 マイナンバーの運用を巡り、本人の同意の有無にかかわらず、自治体が企業に個人番号を知らせる動きが出始めている。市町村が事業者に送付する税務関連の通知で、政府が「本人の同意がなくても問題ない」としていることを踏まえ、県内の31市町村が番号を明記する方針。一方、藤沢市は「個人情報保護の観点から好ましくない」として本年度の記載を見送った。専門家は「自治体は政府の言いなりになるのではなく、独自に判断すべきだ」と指摘しており、記載自治体の判断が問われそうだ。

 問題が浮かび上がったのは、毎年5月に市町村が個人住民税額を事業者と従業員に伝える「特別徴収税額の決定通知書(事業者用)」。総務省は2015年10月に地方税法施行規則の一部を改正する省令を公布、同通知に個人番号記載欄を設け、自治体に従業員の個人番号を記載するよう指示していた。

 これに疑問を呈したのが藤沢市だ。従業員が勤務先へマイナンバー提供を拒否しているケースがあるとし、「個人の同意がない中で自治体や事業者が番号を共有することは、個人情報保護の観点から好ましくない」(市民税課)と説明。市個人情報保護制度運営審議会もマイナンバー記載時は事前の諮問を求めており、「18年度以降は幅広く意見を聞いた上で判断したい」としている。

 こうした動きに、県保険医協会は「事業者が行う住民税の給与天引きに個人番号は一切必要ない」とし、通知書に記載しないよう各自治体に要請。一方、総務省市町村税課は「公平公正な課税の実現、事務の効率化のため、マイナンバーの記載は必要。自治体や事業者に制度の趣旨を丁寧に説明していく」としている。

 税法が専門の立正大法学部の浦野広明客員教授は「個人のあらゆる情報が含まれた特定個人情報の流出が起きたときの被害は深刻だ」と指摘。横浜や東京など各地でマイナンバー制度の違憲性を問う訴訟が続いていることも踏まえ「憲法が保障するプライバシー権を侵害する恐れがあり、不要な番号記載はやめるべきだ」と警鐘を鳴らす。

 政府は制度の浸透を図っているが、導入から1年となる今年1月時点の個人番号カードの取得率は、国内人口の8%にとどまっている。

「国に従わざるを得ない」



 個人番号記載の有無について県保険医協会が県内全33市町村にアンケートを実施したところ、昨年末時点で藤沢市を含む8市町が「検討中」と回答していた。このうち6市町は3月末までに「記載する」方向で決定。最終的に、県内31市町村が政府の意向に沿う形となった。

 アンケートに「検討中」と答えた8市町は、神奈川新聞の取材に「印字したくない」「特定個人情報の漏えいにつながる危険性がある」と答えるなど、複数の自治体が記載に慎重な姿勢を示していた。しかし、3月末までに6市町が「記載する」方向で決定、1町は3月末時点で検討中としている。

 記載を決めた理由について、ある市の担当者は「従業員の同意がなくても法律上問題はない。全国統一で番号記載を進めていくために国から指示を受けている以上、自治体として反対する理由はない。事務手続きを通常通り進めていく」と説明。別の市の担当者は「国の決定には従わざるを得ない」と答えた。
 

特別徴収税額の決定通知 地方税法は、事業者が従業員の給与から個人住民税を天引きし、納付すると定めている。事業者は毎年1月末までに従業員の居住する市町村に「給与支払い報告書」を提出。市町村は5月末までに従業員の個人住民税額を計算し、事業者と従業員に通知する。

 
 

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