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津波そのとき 震災2年〈4〉相模湾 「巨大」対策に追われ

社会 | 神奈川新聞 | 2013年3月14日(木) 20:30

 「明応(東海)型や慶長型。津波の浸水域はかなり広いとの想定だが、こんな地震は起こり得ない」

 2月16日、茅ケ崎市内のコミュニティセンター。津波への不安を抱く住民が数多く詰めかけた講演会で、海洋研究開発機構(横須賀市)の高橋成実グループリーダーは断言した。

 東京湾や相模湾、静岡以西の南海トラフなどで起き得る12地震を想定し、それぞれ津波の影響範囲を描いた県の浸水予測図。中でも「明応東海型」や「慶長型」は最大級の津波をもたらすと位置付けられ、沿岸市町は主にこの二つを前提に津波対策を進めている。

 しかし、高橋リーダーは相模湾の海底が複雑であるとの研究成果を示し、両地震の断層の位置などについて科学的に“反論”。一方でこう付け加えた。「想定は大きめに見積もられていることがある。注意はすべきだが、必要以上に怖がることはない」

 同じ日に開かれた相模湾の津波をテーマとするシンポジウムでも、県想定への異論が示された。「県内最大の14・5メートルの津波が来ると言われ、鎌倉は困っている」。明応東海型のモデルとなり、大仏まで津波が到達したと伝わる室町時代の明応東海地震については、記述した古文書の解釈をめぐる論争が今も続く。

 マグニチュード(M)9という巨大な地震・津波の危険性を事前に指摘できなかった東日本大震災。その反省に立ち、全国の津波対策は方向転換した。「想定外をなくす」を旗印に、時に過大とも指摘される津波高を国や都道府県が示し、最前線に立つ市町村が住民らの疑問の声を受け止めながら対策に追われる構図が浮かぶ。

 千年に一度の津波は来るのか、来ないのか。その可能性や時期は解明できないが、鎌倉や茅ケ崎と同じ相模湾に面する静岡県熱海市は重く受け止め、毎年3月に催すマラソン大会を今年は中止にした。「開催中に津波が押し寄せてきたら、約2千人を数えるランナーの命を守れない」(観光課)と判断したからだ。コースとなる海沿いの「熱海ビーチライン」には、高台へ通じる避難路が3カ所しかない。

 宿泊施設や飲食店からは反対の声が上がり、地元観光協会は市に代替イベントの開催などを要望。協会関係者は市の判断に疑問を投げ掛ける。「マラソンが危険なら、海水浴や花火大会は安全といえるのか。津波で危ない場所という風評につながりかねない」

 巨大な地震や津波が差し迫っているかのような印象さえ与える震災後の社会状況を「M9シンドローム」と形容する国立極地研究所の神沼克伊名誉教授は指摘する。「このままでは対策は息切れしかねず、そろそろ軌道修正が必要。数字に右往左往することのない、地震に対して成熟した社会にしていかなければ」

◆慶長型地震の相模湾側への影響

最大波(メートル)と到達時間

三浦市   8.7 50分

横須賀市  6.8 53分

逗子市  13.6 81分

鎌倉市  14.5 80分

藤沢市  10.7 72分

茅ケ崎市 7.9  52分

平塚市  6.6  50分

小田原市 4.8  47分

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