
無実の人が相次いで誤認逮捕されたパソコン遠隔操作事件で10日、片山祐輔容疑者(30)が逮捕された。難航したサイバー捜査の局面を変えたのは、防犯カメラの画像解析という通常の手法だった。警察・検察を挑発する犯行声明が送られた事件の動機は捜査機関への恨みなのか。無類の猫好きの一面もある容疑者は「全く身に覚えがない」と否認。事件は全容解明に向けて動きだした。
◆昨年末にカメラ35台新設「捜査に貢献、よかった」
片山容疑者逮捕の決め手となったのは、藤沢市の江の島に張り巡らされた防犯カメラの映像だった。
島内にある防犯カメラは計35台。江の島振興連絡協議会が昨年12月21日、同市の補助を受けて新設した。「島内を歩けば必ず写る」(同協議会)という。
「真犯人」を名乗る人物から東京都内の弁護士らに届いたメールの通り、猫の首輪に取り付けられた記憶媒体が見つかったのは今年1月5日。同協議会の湯浅裕一会長(62)によると、同日から11日にかけて捜査員が島内のモニター室にこもり、猫に近づく不審人物が撮影されていないか確認を続けた。
「年明けに、容疑者とみられる男が8~9台の防犯カメラに写っていた」。捜査員からそう聞いたという湯浅会長は、カメラ設置からわずか半月後だっただけに「偶然だが、捜査に貢献できてよかった」。
商店を営む男性(70)は「犯人が分からず不気味だったが、ようやく落ち着く」と安堵(あんど)し、「防犯カメラに守られた安全な島だと広く知ってもらうことができた。安心して観光に来てほしい」と話した。
昨年11月には、「真犯人」からのメールに添付された画像の位置情報が横浜市保土ケ谷区の団地を示し、捜査員らによる聞き込みが行われた。
その団地に息子と2人で住む主婦(69)は、早朝から家族構成や電話番号などを聞かれたといい、「団地の住民が疑われたが、それがなくなりほっとしている」。
一方、別の住民からは「今回も誤認逮捕では」と懸念する声も。無職の男性(74)は「(容疑者が)真犯人かどうかは分からない。また違っていた、ということにならないといいが」と不安げに話した。
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