
新たな推計人口で人口減少の速度や高齢化の進行度が緩和したとはいえ、神奈川県は「大きなトレンドは変わらない。独自の推計値を検証し、総合戦略の対策を進めていく」と冷静に受け止めた。合計特殊出生率も上方修正されたが、2050年に「2・07」に引き上げる県の目標達成は「かなりハードルが高い」(黒岩祐治知事)ことに変わりはなく、将来の課題克服は楽観できない状況だ。
県が昨春まとめた「県人口ビジョン」によると、60年の総人口は833万4千人で、高齢化率は32・9%としている。ただ、この数値は全国平均を下回る1・31(14年)の同出生率が50年に2・07まで上昇すると仮定した推計。実現せずに現状のまま推移すると、60年は人口759万7千人、高齢化率36・5%となり、「地域社会の維持が困難になる恐れがある」とされる。15年の同出生率は1・39に伸びたものの、実現性は依然として不透明だ。
県は今回の推計人口について、「ニュートラルに受け止めている」と説明。独自の将来展望を見直す考えはないとし、「人口減少に歯止めをかけ、超高齢社会を乗り越える」という課題の同時克服に向けた対策を進めていく考えだ。
人口減ストップへ「お試し移住」
将来推計人口が示した人口減は、首都圏に位置する県内でも多くの自治体で歯止めがかからない。苦悩しながらも、あの手この手で対策を講じている。
横須賀市
人口減少のスピードが加速化しているのが横須賀市だ。現在の人口は約40万2600人。三浦半島の中心都市でありながら、特に相模湾側の西部地区は交通の利便性が良いとは言えず、2010年からだけでも1万5千人以上の大幅減を記録した。市都市政策研究所によると、本年度中にも40万人を割り込む見通しで、60年には28万4千人という衝撃的な数字を想定する。