県が搬出元に想定している岩手県洋野町。岸壁には約1600トンの漁網が、5~6メートルの高さで野積されている。津波で押し流され、海中から引き上げられた定置網などで、破れや絡みなどの損傷が激しく修理不可能とされたものだ。
合成繊維素材が中心の網には、強度を増すための鉄製ワイヤやロープなどが取り付けられている。廃棄物の分類上は「可燃物」だが、焼却前の分別や裁断に多くの人員を要する上、高熱に対応する炉が不足しているのが実情。国はすべてを広域処理の対象に位置付け、「安くて早い処理が好ましい」と、燃やさずに埋め立て可能な自治体での受け入れを求めていた。
岩手県によると、沿岸12市町村で処理が必要な「漁具・漁網」は計約5万4100トン。最も多い釜石市(約1万8300トン)で一部を県外搬出しているが、大半の自治体は「大量の可燃物やコンクリート片などを前に、漁網の処理を優先するわけにはいかなかった」(岩手県担当者)という。
一方、広域処理の壁となっている放射能への懸念は、現時点で指摘されていない。神奈川県職員が今月上旬、洋野町の漁網で9検体の放射性物質濃度を調べた結果、いずれも不検出。空間放射線量も毎時0・05マイクロ●1757●程度で、神奈川県内と同レベルだった。
洋野町の担当者は神奈川新聞社の取材に「早く片付けるには広域処理が欠かせない。放射能も心配ないので前向きに検討してほしい」と神奈川の協力に期待を寄せた。
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