横須賀美術館(横須賀市鴨居)を舞台に、音楽を通じた新しい展示で、観光地としての横須賀の知名度を上げる試みが始まった。美術作品の展示施設としては初めて、人気ロックバンド「ラルクアンシエル」をテーマにした特別展を開催中。展示対象のアートの幅を広げることで、集客促進につなげる狙いがある。
「写真がよかった」。埼玉県内から訪れたファンの女性は満足げだ。特別展が始まった9、10日の週末は、入館者数が1500人を超え、通常の3~4倍となった。
来客の内訳は20代の女性グループが6割を占めた。県内や都内のほか静岡、鳥取、北海道など遠方からの来客も。多くは初めての来館だったという。
展示品はメンバー所持の楽器や衣装、写真、CDジャケットなど。結成20周年記念ツアーの映像を流し、疑似ライブ体験ができるようにもした。
著作権法に基づき、実演家やレコード会社などによる音楽著作物の伝達に関する権利(著作隣接権)の使用料を分配している日本音楽制作者連盟(音制連)と電通が、特別展を企画。横須賀市と横須賀市教育委員会が、会場として美術館を無料で貸し出している。
「海が目の前にあるなどの横須賀美術館の立地条件が評価され、なるべくビッグなコンテンツを展示することになった」(横須賀市)。音制連の理事長が代表を務めているプロダクションに所属しているラルクアンシエルが選ばれた。来年3月には第2弾として「日本のポップミュージック音楽史」をテーマにした特別展を企画する。
観光の集客促進を急ぐ横須賀市は今回、横須賀美術館を観音崎地区の拠点と位置付けてPRしたい考えだ。美術館の近隣で京浜急行電鉄が運営している観音崎京急ホテルも、展示期間中に特別室を整備して宿泊プランを提供。発売直後に全期間が完売した。
横須賀美術館は47億円の事業費を投入して2007年4月に完成した。「年間10万人という来客数は維持できている」(美術館)が、10年度決算では4億円の歳出に対して歳入は6千万円程度。事業費に充てた市債は35億円残っている。
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