「グラウラー(唸(うな)る者)」のおとなしさに、岩国市民は拍子抜けした。
2016年8月。米海軍厚木基地(大和、綾瀬市)の空母艦載機、EA18G電子戦機が米海兵隊岩国基地上空を試験飛行した。1機が10分ほど旋回し、離着陸訓練は2回にとどまった。市が求めていた戦闘攻撃機のFA18スーパーホーネットが飛来するはずだったが、当日に機種変更され、機数も絞られた。
旧来型の岩国駐留機と比べ、厚木側の機体は大型化し、エンジン推力が増強されている。移駐に備え、より激しいとされる騒音を体感できる触れ込みだった。
移駐に好意的な「岩国の明るい未来を創(つく)る会」会長の原田俊一(84)も「子どもだまし」とあきれた。「あらぬ誤解を招く。もっと堂々と飛べばいい」
臨海部に「看過できない被害」(山口地裁岩国支部)をもたらしている航空機騒音は移駐後、いかに変質するのか。山口県知事の村岡嗣政(44)は今月の県議会で「生活環境は全体として悪化するとはいえない」と答弁した。2006年と比べ、住宅防音工事の助成地域が6割縮小するとみる政府の予測が根拠だ。
ただし、これは「トリック」(移駐反対派)だ。比較対象が、滑走路の沖合移設によって騒音被害が軽減される以前であり、移設後と比べると実際は…