周到な筋書きを疑わせるほど、その展開はあまりにも出来過ぎていた。
パイロットは米海兵隊岩国基地(山口県岩国市)を飛び立った直後、東方海上に急激な旋回を続けた。滑走路延長に集積する石油コンビナート上空の飛行を回避するためだ。航空ファンは、戦闘機本来の機動性を発揮する「岩国上がり」ともてはやした。
半面、激しい騒音と墜落のリスクを伴った。国は1960年代からの住民の要望を聞き入れ、1992年に滑走路を1キロ沖合に移設する方針を決めた。
埋め立てに、基地西方3キロにそびえる愛宕山の開発残土があてがわれた。標高120メートルの丘陵は中腹まで切り崩され、跡地は5600人規模のニュータウンが構想された。
県と市によるこの事業は、地価下落と住宅需要の低迷で数百億円規模の赤字が見込まれ、2009年に頓挫する。日米が在日米軍再編に合意すると、国は2012年に一帯の4分の3に当たる75ヘクタールを買い取り、米海軍厚木基地(大和、綾瀬市)から転居する米軍家族の住宅用地(262戸)に転用した。
2010年に運用が始まった沖合移設後の新滑走路は、厚木から移駐する空母艦載機の受け皿となった。
「初めから仕組まれていたのだろう」。米軍住宅の建設…