猛烈な風雨をもたらした台風19号は、湘南地域や県西部にも深い爪痕を残した。水かさが増した相模川の沿岸部では浸水被害が多発。高波が押し寄せた相模湾沿岸部も深刻な状況に陥り、住民や関係者らが対応に追われた。
城山ダム(相模原市緑区)の「緊急放流」で水位が上昇した相模川。沿岸の平塚市四之宮地区では、県下水道公社四之宮水再生センターが放出した未処理水が逆流。周辺の住宅地などで浸水被害が相次いだ。
市によると、近くの高齢者施設では12日午後9時45分ごろ、建物内部への浸水があり消防隊が出動。寝たきりや車いすのお年寄りら約50人を別の施設に避難させた。13日朝には施設職員が水浸しになった家具の搬出作業に追われ、「このありさまですので…」と言葉少なだった。
自宅1階が約35センチの高さまで浸水した女性(34)は「もう住める状況でない」とため息をつく。近くの避難所で一夜を明かして自宅に戻ると、水は引いていたが家の中は泥だらけで変わり果てていた。
浸水は相模川の増水に伴い、下水を流す水門を閉じたことが原因とみられる。「水門を閉じればこうなることは分かっていたはず。どうしてうちだけが、という思い」。幼い子ども2人を抱え、10年住んだ家を離れることも考えている。女性は「行政にはしっかり補償してもらいたい」と訴えた。
同市内の相模川河川敷では、J1湘南ベルマーレが練習場に使用する「馬入ふれあい公園サッカー場」が水没するなど広範囲で冠水被害が多発。右岸のマリーナでは保管中のプレジャーボートなどが横転し、クレーン車による片付け作業が行われていた。
小田原市でも酒匂川右岸の酒匂川スポーツ広場が約1・5メートル冠水。水が引いた後の野球場やサッカー場、ゲートボール場などはすべて大小の石で埋まり「壊滅状態」となった。ソフトボール場でも鉄製のくいやバックネットが損壊するなど被害が相次いだ。市によると、年内の復旧は難しいという。