東北地方を中心に未曽有の被害をもたらした東日本大震災から12年。家族を家を失った生徒たちを守り抜く決意で奔走した元中学校長の講演から、被害の記憶と希望の光を追った。(砂田 弘明)

あの日を思い出したくない─。12年前の中学生が書いた作文に、横浜市立蒔田中学校(同市南区)の1、2年生たちはじっと耳を傾けていた。
〈突然ゴオオーと揺れ始めました。そして、ついに津波がきました。何人かの人も目の前で流されてしまいました〉
〈大切な故郷、家、思い出、そして最愛の母を失いました。絶望感を味わい、怒り、悲しみ、恨みの気持ちでいっぱいでした〉
静かな口調で作文を読み上げたのは佐藤淳一さん(62)。当時校長を務めていた宮城県の石巻市立雄勝中は、地震と津波で壊滅状態に陥った。全生徒77人の無事は確認できたものの、多くが家や家族を失った。4月下旬に学校も再開できたが、子どもたちの心に刻まれた傷は深かった。
半年後には校舎前で演奏
「自信と誇りを」 元中学校長、復興輪太鼓に込めた感謝
古タイヤを使った復興輪太鼓を演奏する雄勝中の生徒たち=2012年3月、ベルリン(佐藤さん提供) [写真番号:1145856]