
卒業式でのマスク着用を巡り、県内の教育現場に波紋が広がっている。文部科学省が児童生徒はマスクなし参加を基本とする方針を急きょ決めたことに端を発し、式典が迫る県立高校の関係者の困惑は深まる一方だ。
「卒業生もマスク着用を原則としないで感染対策は大丈夫なのだろうか」。卒業式を目前に控え、県立高校3年の保護者は戸惑いと不安を隠せない。10日の文科省通知を踏まえて県教育委員会が15日に「卒業生にはマスク着用を求めない」と各校に通知したことを受け、その数日後に学校から同内容の文書が出されたからだ。
新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けについて季節性インフルエンザと同じ「5類」への移行を5月に控えて国や県は感染対策を緩める方向になっているが、参加者が多い卒業式でマスク対応を急に変えることに違和感を覚える。この学校では保護者2人の参加を認めており、会場が密になる恐れが拭い去れない。現状では原則着用が望ましく、マスク外しを解禁しては感染対策の上で不安が残るという。
高校入試対応に追われる中で学校も難しい判断を迫られたのかもしれないが、学校に裁量があるはずなのに文書からは十分に対応を検討した形跡は感じられなかった。「4月から新生活が始まる生徒の安全のことをどこまで考えているのだろうか」と疑問が募る。生徒本人は大学入試期間中のため、卒業式のことにまで気を回すのは難しい状況という。