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追う!マイ・カナガワ
「お疲れさま」丹沢で崩壊進む山小屋 建物の引き倒し完了

社会 | 神奈川新聞 | 2022年12月31日(土) 05:50

新大日茶屋内から運び出した廃材を分別するボランティア=17日、丹沢表尾根

 丹沢表尾根の新大日山頂で崩壊が進む山小屋「新大日茶屋」の解体作業が17、18日に行われた。「安全に、楽しく」を合言葉に来年1月下旬まで3回に分けて行われる予定で、初回は小屋内に残る廃棄物の搬出や建物の引き倒しなどを行った。記者も同行し、雪が舞う中、両日計50人のボランティアが作業にあたった。

 日の出からまもない17日午前7時。秦野市の登山口「戸沢の出合」には有志団体「表丹沢登山活性化協議会」の呼びかけに応じたボランティアたちが続々と集まってきた。記者も準備を整え、登山道「政次郎尾根」を進む。同尾根は、協議会が修復作業をしたばかり。半年前に登った時とは比べものにならないほど快適になっていた。感動しながら歩くこと2時間弱、新大日に到着した。

リレー方式

新大日茶屋内に散乱する物品

 作業は建設会社勤務で現場監督の資格を持つ室町幸広さん=茨城県つくば市=を中心に進められた。参加者がリレー方式で瓶や布団、まきなどを運び出し、小屋の外に置いていく。あまりの多さに「本当に急な休業だったんでしょうね」という声が聞こえ、記者も「小屋じまいできずに降りてきてしまった」という所有者の諸星晃さんの言葉を思い出した。

 あらかた運び出したところで初日の作業は終了。雪が舞う中、約20人は宿泊先の「木ノ又小屋」へ向かった。

新大日茶屋内から瓶などをリレー方式で運び出すボランティア=17日、丹沢表尾根

 翌日。前日から降り続いた雪は朝までにやみ、銀世界が広がっていた。

 作業は早くも大詰めを迎える。外壁を剝がし、傾いた建物を支える柱を撤去すると一瞬きしんだが、倒れる気配はない。だが、最後は室町さんが一本の鉄線を切ると、南側に倒れた。拍手と共に「お疲れさま」という声もあがった。

外壁を剥がし、引き倒す直前の新大日茶屋=18日、丹沢表尾根
新大日茶屋内から運び出された物品や木片

「歴史に幕」

建物を支える鉄線が切られ引き倒された新大日茶屋=18日、丹沢表尾根

 建物が崩れる瞬間、ボランティアはさまざまな思いで見つめていた。

 東京都あきる野市の町田充さんは学生だった約40年前、新大日茶屋まで飲み物や燃料などの荷上げをしていた。一連の「追う!マイカナガワ」を読んで参加したといい、「自分の青春というか、一つの歴史が終わったよう」と感慨深げ。

 「通る度、いつか倒れるのではと心配していた」のは寒川町の沼倉彩夏さん。「知らない方と協力し合うのも面白い。次も参加します」と笑顔を見せた。

 室町さんによると、次回(来年1月14、15日)は屋根や小屋組の解体を予定。協議会代表の神野雅幸さんは「合わせて廃棄物を荷下ろしできるものに分別していく作業も進めていく。引き続きの協力をお願いしたい」と話した。

 解体の様子は動画でも撮影され、協議会のフェイスブックページなどに公開されている。

父のレリーフ「完了の証に」

新大日茶屋の所有者諸星さん(右)から解体について謝意を伝えられた神野さん=秦野市内

 「新大日茶屋」解体を前に、所有者の諸星晃さんと、作業を行う有志団体代表の神野雅幸さんが面会した。神野さんは「いいメンバーがそろった。みんなで力を合わせ楽しくやりたい」と決意表明。諸星さんは「引き受けていただき本当にありがたい。事故の無いよう気を付けてください」と謝意を述べた。

 2人が顔を合わせるのは6月以来。諸星さんが「本来なら自分がやらなければいけないのに、任せっきりで申し訳ない」と切り出すと、神野さんは「長年のご苦労もあったと思う。ようやく作業ができる環境が整った。もう少しお待ち下さい」と応じた。

 話は晃さんが“下山”を望む、父・辰雄さんをあしらったレリーフにも及んだ。「わがままばかりで…」と恐縮しきりの晃さんに神野さんは「全ての作業が終わった証としてお渡しできるよう頑張ります」と話した。(最上 翔)

寄付を募集

 表丹沢登山活性化協議会では、新大日茶屋の解体に必要な資材費やボランティアの山小屋宿泊料、保険料などの補助となる寄付を募っている。振込先は、ゆうちょ銀行、記号番号10990、番号26304681、口座名「表丹沢登山活性化協議会」。他行から振り込む場合は店名〇九八、店番098、口座番号は普通2630468。

雪化粧した丹沢。奥には富士山も見える=18日、丹沢表尾根

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