公共インフラの老朽化に警鐘を鳴らした中央自動車道笹子トンネル事故の発生から10年。大切な家族を突然奪われたあの日以降、声を上げ続けてきた人がいる。その言葉から「命を守る安全な社会」を考える。

「高度経済成長期に建設されたこの国のインフラの安全がどれだけおろそかにされてきたかが明らかになった」
10年前の中央自動車道笹子トンネル事故で、長女の玲さん=当時(28)=を奪われた父の松本邦夫さん(71)と母の和代さん(71)は、改めてそう思う。
笹子トンネルは1972年着工、77年に開通した。事故は、換気のため設置された1枚1トン以上あるコンクリート製天井板や天井板を連結する隔壁板が連続して約140メートルにわたり突然崩落した。
目視や打音検査は行われず
笹子トンネル事故10年 未然防止へ「組織罰」実現求め
松本玲さん [写真番号:1126601]
玲さんが持っていた時計と鍵。母和代さんは「事故の証言者だから」と大切に保管している=兵庫県芦屋市 [写真番号:1126602]