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生活保護費の引き下げは違法 横浜地裁が国に取り消し判決

社会 | 神奈川新聞 | 2022年10月19日(水) 12:34

横浜地裁判決を受け、勝訴を喜ぶ弁護士=19日午前11時40分ごろ、横浜市中区

 国が生活保護費を引き下げたのは生存権を保障する憲法に違反するなどとして、県内の受給者らが、国や自治体に引き下げ処分の取り消しなどを求めた訴訟で、横浜地裁(岡田伸太裁判長)は19日、引き下げを取り消す判決を言い渡した。同地裁は「厚生労働相の引き下げ判断には過誤と欠落があり、生活保護法違反」と判断。国の違法性を認めた判決は全国で4例目。憲法判断には踏み込まなかった。

 原告は横浜や川崎、相模原など7市に住む30~80代の受給者ら46人で、2015年に横浜地裁に提訴した。

 国は13~15年、生活保護費のうち、食費や光熱費などに当たる生活扶助の基準額を平均6・5%、最大10%引き下げた。

 判決などによると、厚労省は引き下げの根拠として、08~11年の物価下落率は4・78%だったなどと独自に算定した。原告側は、生活保護受給世帯の消費実態と合わない恣意(しい)的な算出を根拠としており、厚労相の裁量権を逸脱しているなどと、違法性も訴えていた。

 岡田裁判長は判決理由で、国の判断について「統計など客観的な数値との合理的関連性を欠く。専門的知見との整合性もない」と指摘。専門家の会議の議論を経ておらず、根拠の一つとされた物価下落率は、生活保護受給世帯の支出が少ないパソコンやテレビなどの価格下落が大きく影響したもので、受給世帯の実態に即しているとは評価できないとも認定した。

 その上で、引き下げの対象が受給世帯の約96%と広範で、減額幅も大きいとして「結果は重大。最低限度の生活を具体化するための厚労相の判断過程には、過誤と欠落がある」と指摘。原告側が訴えていた裁量権の逸脱や乱用を認め、「違法な引き下げ」と結論付けた。原告らが国に求めていた賠償の支払いは退けた。

♦生活保護基準引き下げ違憲訴訟 生活保護費の引き下げは憲法が保障する生存権の侵害に当たり違憲で違法だとして、生活保護受給者らが国と自治体に対し、損害賠償の支払いや基準額引き下げの取り消しなどを求めた集団訴訟。全国29都道府県で提訴され、これまでに計13件の地裁で判決が言い渡された。9地裁では、原告側が敗訴したが、大阪、熊本、東京、横浜の4地裁は、国の判断の違法性を認め、引き下げ処分を取り消す判決を言い渡した。

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