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追う!マイ・カナガワ
川崎の民設学童、なぜ補助金ない?市は独自施策、現場苦悩

社会 | 神奈川新聞 | 2022年9月25日(日) 05:00

 横須賀と横浜で料金差のある学童保育事情について、神奈川新聞「追う! マイ・カナガワ」取材班が昨年12月に取り上げたところ、県内各地からさまざまな課題が寄せられた。その中で、川崎市の保護者や学童運営者からは「川崎は民設学童への公的補助がなく、運営に困っている」という声が。有志団体が先月から、市に学童施策の検証を求める陳情を出すため、署名活動も始めたという。人口154万人、子育て世代も多い川崎市で、なぜ補助が出ないのだろうか─。

放課後の居場所として、自宅のようにくつろいで過ごす子どもたち=川崎市宮前区の学童「スキップ鷺沼」

 同市では、全市立小114校に独自事業「わくわくプラザ」(わくわく)を設置しており、保護者の就労に関係なく全児童が無料で利用できる。一方で、市に届け出ている民設学童は企業運営などを含めても24カ所。同様に全児童対象の「放課後キッズクラブ」を全校設置している横浜市内には民設学童も222カ所(企業運営以外の補助対象)あり、比較すると川崎はかなり少ない。

 学童事業は国の基準を踏まえ、各自治体が条例で定めて実施しているが、国や県からの分を含めた補助金の配分は自治体ごとに自由に決められる。民設学童も補助している横浜市と異なり、川崎市では国・県を含め補助金を交付しておらず、特に現在8カ所ほどある保護者や地域住民らが運営する「自主学童」は資金繰りに困っているという。

 その保護者ら有志が立ち上げた「川崎市の学童保育の充実を求める会」は「川崎でも学童を必要とする家庭が年々増加している」と訴え、(1)現状のわくわくが条例基準や制度に沿って運営され、かつ保護者のニーズを満たしているか(2)民間学童を補助事業とすべきか─について検証することを求めた陳情を、同市議会に来月提出する予定だ。

 現場の実情を探るため、市内の自主学童を訪ねた。

やりがいはあるのに…

 東急田園都市線鷺沼駅(川崎市宮前区)近くのビル3階にある、保護者会が運営する自主学童「スキップ鷺沼」。自宅のような雰囲気の空間が広がる中、国の学童基準の1人当たり面積(おおむね1・65平方メートル以上)と集団規模(同40人以下)に沿った形で、40人超の子どもたちが放課後を過ごしている。マイカナに投稿した40代の母親は、看護師の仕事をしながら学童の広報業務なども担ってきたといい、「大変だが、子どもが過ごす環境にできるだけ関わりたいと思って選んだ」と話す。毎月の会議や、夏と冬の合宿にも保護者が参加し、普段から交流していることで子育ての悩みも共有できる。

 ただ、公的補助がないため保育料は月約3万円。全国的にも高いとされる横須賀市の平均1万6千円(昨年度)や、横浜市の同1万7千円と比べても高額だ。母親は「職員の給料も上げられず、長く働いてもらえないことが大きな課題」と明かす。

 昨年4月に都内の学童から移ってきた30代の男性支援員も「もともとの給料が安いので、生活が成り立たず辞める人が多い。やりがいのある仕事なのに残念」と肩を落とす。

行政の事情

 共働きやひとり親家庭などの小学生を放課後に預かる学童保育。川崎市では県内でもいち早く、1962年から無料事業として始めた。各地域にこども文化センターや、小学校敷地内に建てたプレハブなどの「留守家庭児ホール」を増やしていき、76年からは民間にも委託。公設と民設が混在する中で利用者は増え続け、待機児童や未設置学区が課題となっていた。

 介護やボランティア活動など就労以外の多様な事情にも対応しようと、市は2003年、保護者の就労に関係なく全児童が無料で利用できる公設民営の「わくわくプラザ」(わくわく)を全市立小114校に設置した。全国的にも珍しく、これまでの学童保育機能を統合させる形を取り、公設学童を廃止。民間への委託と補助金交付も打ち切った。

預け先なく

 「周辺でも保育園は増えていて、ニーズはある。補助が出るなら民設学童はもっと増えるはず」。同じくマイカナに声を寄せた、「花の台学童保育ホール」(宮前区)の運営委員の男性は嘆く。

 市内には企業が運営する学童もあるが、さらに料金が高い傾向にある。全市立小にわくわくが設置されているものの、「定員がない分、利用者が多くてゆっくりできず、子どもが行きたがらないケースもある」と同学童の保護者も指摘。預け先がなく在宅可能な仕事に転職する人もいるといい、「わくわくがあれば十分という声もあると思うが、家庭の事情や働き方は本当にさまざま。民設学童にも補助金を出している横浜市のように、もっと選択肢を増やしてほしい」と訴える。

 民設学童への補助について、市の担当に聞くと「わくわくで量の見込みに対応できるため、民設への補助予定はありません」ということだった。

取材班から

 保護者の就労の有無に関係なく、無料で利用できるわくわくがあることは一見魅力にも思える。だが、子どもによっても家庭によっても異なるニーズに対応するにはそれだけでは難しい。これからますます共働き世帯が増えていく中、どれだけ選択肢をつくれるかが、「小1の壁」対策の鍵を握るのではないだろうか。(塩山 麻美)

 ◆マイカナと「学童」 横須賀と横浜で料金差のある学童事情を、マイカナが昨年12月27日付の記事で取り上げた。保育園と違い、学童は市町村の裁量が大きく、国や県を含めた補助金の配分を自由に決められるため、自治体によって料金や運営体制に差が生まれている。


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