
真鶴町の松本一彦町長(56)が選挙人名簿を自らの町長選に不正使用するなどした問題は、町が町長を刑事告発する異例の事態に進展した。古くからの地縁、血縁の強さゆえに町長支持派と反対派の政争は激しく、混乱収束の糸口は見えず、人材流出が続く町役場は正常な機能を失いかけている。公私混同がまかり通り、町長も議員も平然とうそをつく─。県西部で過疎の港町を取材してきた記者が、迷走を続けた松本氏の330日を振り返る。
「一度うそをついたら、うそをつき続けなくてはならなくなる」
真鶴生まれで30年間町職員を務めた松本氏は、2020年9月の町長選で初当選し、就任のあいさつで職員らの前で説いた。しかし、その言葉は皮肉にも後に自らに向けられることになる。
松本氏の最初の「うそ」は
松本町長と記者の330日 町の心は割れたまま
選挙人名簿コピーの持ち出しを認め謝罪する松本氏=真鶴町内(2021年10月26日撮影) [写真番号:1112853]
真鶴町の選挙人名簿不正問題の動き [写真番号:1112854]
松本氏から選挙人名簿を受け取ったとして会見で釈明する元町長の青木氏(右)と岩本氏(左)=真鶴町内(2021年11月4日) [写真番号:1112855]