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時代の正体 記者の視点=田中大樹
沖縄復帰50年 歴史への視座 忘れまい

社会 | 神奈川新聞 | 2022年9月7日(水) 10:01

防衛省との会合で語る具志堅さん=東京都千代田区

 8月5日、衆院第2議員会館。配布されたA4判8枚の文書には、酷似した文言が並んでいた。

 辺野古新基地建設を巡り、政府は海を埋め立てる土砂の新たな調達候補地に沖縄本島南部を盛り込んだ。沖縄戦の激戦地だった南部には今なお戦没者の遺骨が眠る。政府は遺骨で新たな基地を造ることもいとわない。文書は市民団体や遺族と防衛省の会合の席で、市民団体側が事前に提出していた質問に防衛省が示した回答文だった。

 〈特に、本島南部一帯では、多くの住民の方々が犠牲になったものと認識しています〉

 〈御遺骨の問題は大変重要であると考えていることから、土砂の調達については、今後しっかりと検討してまいります〉

 一言一句違わない、あるいは一部を入れ替えただけの「コピペ」された文言を担当者がひたすらに読み上げる。遺骨収集ボランティアの具志堅隆松さん(68)らが説明を求めたが正面から答えず、脈絡なく回答文を繰り返し、時に答えに窮して押し黙る。問答は成り立っていなかった。

 誰が調達先を決めるのか─。具志堅さんがとりわけ追及したことだった。

 〈土砂の調達先は、工事の実施段階で決まるものであり、県内と県外のどちらから調達するかも含め、現時点で確定しておりません〉

 担当者は回答文に視線を落とし、同じ文言に終始する。「私の顔を見てください」と諭されながらようやく、決定するのは受注業者だと明かした。

 「日本語で何と言うか知っていますか。『卑怯(ひきょう)』と言うんです」

 具志堅さんが迫る。

 「防衛省が計画を立てるが、受注業者に決めさせる。計画を立てたこと自体、非人道的で戦没者への冒瀆(ぼうとく)です。さらにその責任を受注業者に負わせようとしている。卑怯以外の何ものでもありません」

 遺族の女性が「(遺骨は)国のものではない」と声を震わせ、祖父の遺影を手に詰め寄る場面もあったが、担当者は「ご遺族の意見を賜ることについては予定はございません」とにべもなかった。

 戦没者を「英霊」と敬う素振りを見せながら尊厳を蹂躙(じゅうりん)する倒錯。会合後、具志堅さんは嘆息した。

 「『大変重要』『真摯(しんし)に受け止める』と言いながら、遺骨が混じった土砂を海に沈め、軍事基地を造る。偽善、欺瞞(ぎまん)です」

1匹のチョウ

 
 

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