特殊詐欺の実態 “飛び”の男たち
逃げ切れないなら強盗 懸賞金かけられた男の目論見
社会 | 神奈川新聞 | 2022年9月6日(火) 17:00
2022年上半期(1~6月)は、8年ぶりに特殊詐欺の被害額が増加に転じた。増長する詐欺の被害は一層深刻化し、さらに複雑、巧妙化している。連載「特殊詐欺の実態」の第3弾では、その中でもとりわけ特殊な犯行手口である“飛び”の実態に迫る。
(詐欺グループ関係者や訴訟関係者、捜査関係者への取材のほか、被告や共犯者、証人による公判廷供述、訴訟関係資料を基に構成しています)
捜査関係者が「横須賀事件」と呼ぶ、被害額600万円の特殊詐欺(トクサギ)事件の発生から1カ月が経(た)った2020年1月。大門充宏=仮名、逮捕当時(27)=の“飛び”グループから、リクルーター(勧誘役)を担ってきたナンバー2の新崎皐=仮名、逮捕当時(23)=が姿を消した。
特殊詐欺の被害金を持ち逃げする“飛び”を繰り返していたことが別の詐欺グループにばれ、追い込みをかけられたのだ。
別の詐欺グループの関係者が明かす。
「当時、新崎が持ち逃げした総額は3千万円とも言われていた。この頃、新崎には『身柄を引き渡したら600万円』という懸賞金がかけられていました」
被害金を横取りされた詐欺グループの幹部は丁寧な口調ながらも怒りを隠さず、新崎を電話口で責め立てた。
「飛びましたよね? タタキ(強盗)をやって、金をツメて(返済して)ください。とりあえず、実行犯を3人集めろ!」
逃げ切れない、と悟った新崎はトクサギや“飛び”ではなく、タタキで手っ取り早く大金を手に入れ、それと同時に詐欺グループの追跡からも逃れようと目論(もくろ)んだ。
一度は失敗に終わるも
逃げ切れないなら強盗 懸賞金かけられた男の目論見
強盗の標的となった中古ブランド品店が入る雑居ビル(中央)=東京・池袋(写真を修整しています) [写真番号:1110416]