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追う!マイ・カナガワ
横浜税関前のヤシの木 誰がいつ植えた? 写真に手掛かり

社会 | 神奈川新聞 | 2022年9月5日(月) 05:30

 「横浜税関前の海岸通りにあるヤシの木はいったい誰が、いつ植えたのか」─。今春に3代目横浜みなと支局長として赴任した記者は、歴代支局長が探ってきたが分からなかったという謎を引き継いだ。「追う! マイ・カナガワ」取材班に加わって調べてみることにした。

青空に映える10本

横浜税関前の歩道に、高さ16メートルのヤシの木が10本並ぶ=横浜市中区

 強い日差しを受け南国にいるような気分で、記者は取材拠点のある横浜港大さん橋国際客船ターミナル(横浜市中区)から歩いた。

 「横濱三塔」と呼ばれる横浜港のシンボルの一つで、クイーンと称される横浜税関本庁舎(1934年竣工(しゅんこう))前の歩道。ヤシの木が10本並び、見上げると、夏の青空に映える。

 早速、税関の広報広聴室を訪れたが、「時折問い合わせがあり、私たちも調べたのですが、植えた時期や理由が分からないんですよ」と、言われてしまった。

 判明したのは、税関ではなく市道を管理する横浜市が植えたらしいことや、ヤシの高さが現在は約16メートルほどということぐらい。

 その昔、税関の敷地内にシュロが植えられていて、その時代の雰囲気を残すために植えられたのでは─と推測していたという。

 かつてクイーンを彩っていたシュロであれば、日本の税関100周年に当たる72年に43本が植栽された記録が残っていた。

 そのシュロは、本庁舎が市歴史的建造物に認定されたことを受けて2001年に修復工事を行った際に、すべて伐採されたという。竣工当時の意匠を再現する必要があり、根が張って建物に影響が出る恐れもあったから、ということだった。

「推奨樹木でもない」

 そこで横浜市中土木事務所に聞いてみると、街路樹の資料で調べてくれた。「2001年に『ワシントンヤシ10本、高さ5メートル』という記録が残っていますが、それ以前は分かりません」

 ヤシは山下ふ頭やみなとみらい21(MM21)地区などで市港湾局の管理地にも植えられている。何か分かるかと思ったが、税関前の道路は市道で「港湾道路」でないため、港湾局で手掛かりは得られなかった。

 続いて、市全域の街路樹を管理する市道路局を訪れると、道路緑地台帳を出してくれた。調査年月は2001年4月、図面には中土木事務所の回答にあった項目のほか、幹の周囲は80センチとあり、街路樹の配置も示されている。そのころに植樹帯が整備された可能性が高いようだが、わずか21年前のことなのに、いつ植えたかははっきりしない。

 ちなみに道路局によると、街路樹の種類を決めるのは市土木事務所や開発業者や住民との話し合いなど、ケースバイケース。「最近、ヤシを植栽した例は聞いたことがなく、また推奨している樹木でもないですね」。市内で多い街路樹はイチョウ、ユリノキ、サクラと続く。最近はヤマボウシやサルスベリなど、成長ペースが遅めの樹木が選ばれる傾向という。

植物研究者に聞くと

 本紙の歴代のみなと支局長は、税関前のヤシには実がなったことがないのでは─と言っていた。もし16メートルの高さから実が落ちたら危ないよなあと思い、国立科学博物館に聞いてみた。

 根元の写真や幹の太さなどを伝えると、「ヤシ科のワシントンヤシモドキですね」と植物研究者。

 「野生種ですので果実を付け、種子を付けます。ただ、環境や(昆虫や鳥などの)花粉媒介者によって、花が咲かない(果実はならない)可能性があります」。ただ、実はならないと決まったわけではなく「1年を通じて観察され、ご自分の目でお確かめになるのが一番分かりやすいです」とのことだった。

 これまで、中土木事務所には、実がなって落ちたことなどによる陳情などはないが、「生育環境によるのでどう育つかは分からない。街路樹など道路施設は、日々パトロールや点検などを行っている」という。

きっかけは日韓W杯?

2001年5月ごろに撮影された写真。手前に背の低いヤシ、奥の税関敷地内にはシュロが写っている(横浜税関提供)

 取材がかなり脱線してしまったころ、横浜税関から連絡があった。道路が整備された当時に、ヤシが植栽されたことが分かる写真が見つかったという。早速見に行くと、撮影日は本格的な庁舎の修復工事が始まる前の2001年5月ごろ。きれいに整備された車道沿いに、税関敷地内の伐採前のシュロと、歩道に植えられたばかりでまだ背の低いヤシが仲良く並んでいる。

 「ちょうど2002年のサッカーワールドカップ(W杯)日韓大会が開かれる前で、この周辺も整備工事が進んでいたのでは」と税関の広報担当者。記録は見つからなかったが、そのころに植えられたもので間違いなさそうだ。

 今年の11月28日に日本の税関が誕生して150周年を迎える。100周年に植えたシュロは姿を消して久しいが、今もヤシとクイーンの塔が、当時の街並みを思い出させてくれる。(吉田 太一)


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