
広島の原爆投下後に降った「黒い雨」被害を巡る被爆者認定の新たな基準の運用が今年4月に始まり、神奈川県内では12日時点で4人が被爆者と認定された。
横浜市港南区の槇島礼智さん(77)はその一人。黒い雨を浴びてから77年。ようやく手にした手帳を見て「これまで差別されていておかしいと思っていた。被爆者と認定されてうれしい」と喜びを語った。
生後10カ月の頃、爆心地から北西約20キロ離れた広島市佐伯区の自宅近くで黒い雨を浴びた。母親によると、双子の弟と乳母車で散歩中、爆心地の方の空が暗くなった。その後、黒い雨が降り、自宅へ急いで戻ったという。
槇島さんが雨に遭った場所は国の援護対象外だが、援護区域とは川で隔てられているだけ。「ほぼ同じ場所なのに川を挟んで援護を受けられる人とそうでない人がいる。差別されていた」と振り返る。
62歳で悪性リンパ腫を発症。大学卒業後は神奈川に住み、周囲に被爆者がいなかったため手帳について考えてこなかったが、初めて「放射能の影響があるのではないか」と疑うようになった。
被害者救済の新制度運用が決まり、広島で同じ地区に住んでいた黒い雨訴訟の原告の助言を受け、今年3月に申請し、6月28日に認定された。県内では8月12日時点で15件の被爆者健康手帳の交付申請があり、11件が審査中という。
槇島さんは「申請するときは被爆者と認定されるとは思っていなかった。多くの人が申請して、自分と同じように被爆者と認められる人が増えたらうれしい」と話した。(徳増 瑛子)