映画「ゴジラ」や青春映画で活躍し、晩年には反戦を訴え今年3月に亡くなった俳優宝田明さん(享年87歳)の遺志を継ごうと、役者仲間や市民有志による音楽ステージが9月、小田原で開かれる。宝田さんが生前に作詞した「私の願い」は「守り続けよう 今の平和を」と歌い、ともに反戦運動に携わった仲間たちは「日本もうっかりすれば戦争に向かってしまう。その小さな種を消していかなければいけない」と訴える。
宝田さんは1934年、朝鮮北部に生まれ、少年時代を過ごした旧満州に11歳の夏、旧ソ連軍が突如として侵攻。ソ連兵は街で略奪と暴行を繰り返し、宝田さん自身も脇腹をソ連兵に撃たれて生死をさまよった。ソ連兵に連れ去られた兄を残したまま、一家は命からがら日本へと引き揚げた。
帰国後、「ゴジラ」(54年)の主演に抜てきされ、トップスターの階段を駆け上がったが、自らを「ノンポリ」と称し、戦争への思いは長らく封印してきた。「戦争反対と言ったら仕事がなくなる。でも、これからは自分の言いたいことを言いたい」。80歳を超え、50年来の親交があった俳優沢木順さん(76)に打ち明けた。
ソ連への怒りを原動力に
宝田明さんの反戦の遺志継ぐ 小田原で9月に音楽ステージ
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生前に「宝田明物語」のステージに立つ宝田さん=2018年、藤沢市内 [写真番号:1103980]
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宝田明さんの遺志をつないで音楽ステージを企画する沢木さん(右端)ら=小田原市内 [写真番号:1103981]