特殊詐欺(トクサギ)の被害が止まらない。取材を進めて浮かび上がるのは、トクサギを担う犯罪者たちが、強盗や強盗致傷へと先鋭化していく実態だ。末端の共犯者たちが脅され、追い詰められて凶悪化する現実とは。「粗暴化する末端」に迫る。
(捜査関係者、詐欺グループ関係者、訴訟関係者への取材のほか、起訴された被告や共犯者、証人による公判廷供述、訴訟関係資料を基に構成しています)
横浜市港北区の高齢女性=当時(91)=の家に押し入り、女性を縛り上げた桶谷博=仮名、当時(29)=は、女性宅のインターホンが鳴ったことで失敗を悟り、庭から逃げ出した。
「アカサカ」と「テラサキ」を名乗る指示役に言われるがまま、西へ向かって走り続けた。鶴見川を渡ってほど近いコンビニで、共犯者の木暮虎夫=仮名、当時(22)=と合流した。

この時、木暮の手元には女性宅から奪った現金2万4千円とキャッシュカード2枚、クレジットカード3枚があった。新たな指示が木暮に告げられた。
「奪ってきたものをスマホで撮って送れ」
木暮はコンビニ駐車場の地面に奪った現金やカード類を広げ、スマートフォンで撮影した。
すぐに返信が来た。奪った現金を使ってコンビニで「iTunes(アイチューンズ)カード」を購入しろという指示だった。
現金をコード化
巧妙化する報酬授受 ギフトカードを悪用
木暮(仮名)が奪った金やキャッシュカードを駐車場の地面に置き指示役の男らに送る写真を撮影したコンビニ=川崎市幸区 [写真番号:1095397]