沖縄は15日、本土復帰から50年を迎えた。知花さんに復帰や日の丸に寄せる思いを聞いた。(田中 大樹)

音もなく、雨が降っていた。庭木の緑が深みを増し、つややかに輝く。
沖縄本島中部の西海岸、読谷村の高台に立つ家の主(あるじ)、知花昌一さん(74)は庭に面したソファに腰を下ろし、半世紀前を振り返った。
「あの日も雨でした。それも土砂降りです」
1972年5月15日、沖縄の本土復帰の日。東京・日本武道館と那覇で記念式典が開催され、那覇会場の市民会館に隣接する与儀公園に1万人ほどが集まった。抗議の声を上げる人波の中に、知花さんはいた。
「足元は田んぼのようにぬかるんでいました。くるぶしまで泥に漬かりながら怒りの声を上げ、国際通りまでデモ行進をしながら悔し涙を流しました。信じた日本にまたも裏切られた。泥と汗と涙にまみれ、沖縄が泣いていました」