「町内に資材置き場ができ、建設残土を運ぶダンプカーが突然、行き来するようになった。騒音・振動で住民が迷惑している」。横浜市都筑区の男性から「追う! マイ・カナガワ」取材班に相談が寄せられた。送られてきた動画を見ると、確かに夜間まで作業音が響き、住民が困っている様子が伝わってくる。解決策を探ろうと取材を進めた。
壁にひび、水道管破裂
最初の投稿があったのは昨夏のこと。投稿した男性の案内を受けて、取材班が現場を訪れると、周辺は住宅や畑が入り交じり、のどかな風景が広がっている。
男性によると、資材置き場ができたのは2019年の夏。その後、多い日には1日100台以上のダンプカーが昼夜問わず町内に出入りしてきたという。
「ダンプカーの往来で壁にひびが入り、水道管が破裂した家もある。過積載のダンプが土をこぼして道路を汚すし、夜中も振動・騒音がすごくて眠れない」
資材置き場には土が高く盛られ、その上にはショベルカーが堂々と鎮座していた。土の山にはカバーがかかっておらず、雨風に吹かれたのか、周囲には土まみれの茶色いタイヤ痕も散見される。
「被害」は認められず
男性ら住民は横浜市に相談し、資材置き場の騒音測定が行われたが、公害認定の対象となる数値に達せず「被害」は認められなかった。
住民は過積載と思われるダンプを見つけると、警察に通報もしてきた。ただ、個人事業主のダンプ運転手に減点や罰金を科しても、資材置き場を運営する事業者側には罰則がない。問題の解決には至らなかった。
市に窮状を訴え続け、ひびの入った道路は舗装し直されたものの、事業者側の責任が問われることはなかった。男性は「市や警察に何度も相談しても解決策はない。どうすればいいのか…」と肩を落とす。別の住民は「道路補修に数千万円はかかったと思うが、道路が壊れたらまた直すのか。多額の税金を使って同じことを繰り返すだけで無駄ですよね」と首をかしげた。
取材班は、資材置き場を運営する事業者に話を聞こうと試みたが警戒され、「ノーコメント」「もうすぐここは出て行くから」などと繰り返され、なかなか本音は聞けなかった。
住民と業者、双方の事情を知る都筑署にも話を聞くと、「騒音などの苦情が寄せられているが、『許可を得た上での事業』という業者側の言い分も、『元の生活に戻りたい』という住民の主張もどちらもうなずける。今の現状では、根本的な解決が難しい」と頭を抱えていた。ただ、署の幹部によると、事業者は苦情に困っている様子で「仕事がやりづらいので、もうすぐ出ていく」と話していたという。(マイカナ取材班)
神奈川新聞社は暮らしの疑問から地域の困り事、行政・企業の不正まで、無料通信アプリLINE(ライン)で読者から寄せられた取材リクエストに幅広く応える「追う! マイ・カナガワ」(略称・マイカナ)に取り組んでいます。
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横浜・資材置き場の騒音振動(上)住民迷惑、どうすれば?
鉄塀を軽く超える土砂。業者のショベルカーが昼夜問わずに作業をしていたという=2020年1月、横浜市都筑区(住民提供) [写真番号:1084910]
往来するトラックによって割れたとみられる舗装前の道路=横浜市都筑区(住民提供) [写真番号:1084908]