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訪問看護と安全(下)対策置き去り、現場任せ 神奈川でも

社会 | 神奈川新聞 | 2022年3月27日(日) 05:00

退院直後の患者をケアする早乙女さん(右)=横浜市内

 「訪問看護の現場はいつ、どんなリスクにさらされるかわからない。昔から危惧されてきたこと」

 埼玉の事件をどう受け止めるか。神奈川県訪問看護ステーション協議会会長の横山郁子さん(53)に尋ねると、データを示しながら業界の問題点を指摘した。

 患者の自宅という閉ざされた空間で生じるハラスメントは後を絶たない。全国訪問看護事業協会の2018年の調査では、訪問看護師の45%が身体的暴力、53%が精神的暴力を、それぞれ利用者や家族から受けたと回答。さらに事業所の97%が対策の必要性を認めながら、60%が「具体的な対処法が分からない」と答えている。

「感情のはけ口」

 横浜市青葉区で訪問看護ステーション「ナースの家すすき野」を運営する横山さんは、事件を伝えるニュースに10年前の体験をフラッシュバックさせた。

 「大変なことになった。助けて。今すぐ来て」。患者のSOSに男性職員と2人で急行すると、自宅の居間で包丁を手に立つ患者の妻が叫んだ。「この人を殺して私も死ぬの」。足元には割れた食器の破片が散乱し、制止しようと近づくと刃物を向けられた。

 患者宅には週3回訪問していた。訪問外の時間は自宅で妻が一人で夫の看病を抱え込んでおり、精神的に追い詰められていた。

 「落ち着いて」。距離をとりながら、いつでも逃げられるように玄関口から妻を説得した。隙を見て警察に通報したが「事件性がない」と取り合ってもらえず、自治体も現場対応に回らなかった。患者の入院先を決め、その場を後にするまで2時間かかった。

 県内の訪問看護ステーションで働く女性(41)も数年前、訪問先でカッターナイフを突きつけられた。終末期ケアを受けるなか、衰弱していく母の様子に気を動転させた長女に「なんとかして」と刃物を向けられた経験を振り返り、「生死がかかる状況に平常心ではいられない。親身に寄り添うほど、私たちが感情のはけ口になる」と打ち明けた。

増やしたくてもできない

 
 
 

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