東日本大震災から11年を迎える。津波で甚大な被害を受けた岩手県陸前高田市では、神奈川出身の移住者たちが根を張り、新たな芽を吹かせている。「復興に貢献しないと」と気負うことなく、「やりたいこと」の延長線上に復興を思い描く。被災地の未来を思う4人を追った。(下)ではこのうち1人を紹介する。

初めて岩手県陸前高田市を訪れたのは、東日本大震災前の2008年。大学1年だった古谷恵一さん(33)=横浜市戸塚区出身=はゴスペルサークルの活動で、見ず知らずの町の人たちに歌声を届けて回った。
当時の陸前高田市の人口は2万3千人。地域の集会場や喫茶店、福祉施設を訪れては歌を披露した。「上を向いて歩こう」や「真赤な太陽」が喜ばれた。お年寄りが「今年も来てくれたのね」「また聴かせてよ」と目を輝かせる。翌年以降も通い、集いの輪は広がった。「高田の人はよそ者でも温かく迎え入れてくれる」。いつまでもこの時が続くと思っていた。
大津波にのまれ
神奈川から陸前高田へ(下)変わった景色、変わらぬ温かさ
陸前高田の魅力を語る古谷さん=岩手県陸前高田市 [写真番号:1043644]
民泊を終え、受け入れ家庭との別れのあいさつで涙ぐむ中学生ら(「マルゴト陸前高田」提供) [写真番号:1043645]
修学旅行生に陸前高田を案内する古谷さん(左端)(マルゴト陸前高田提供) [写真番号:1043646]