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追う!マイ・カナガワ
知りたい福島・東北の今(1)廃炉作業 道のり険しいまま

社会 | 神奈川新聞 | 2022年3月5日(土) 10:00

 東日本大震災から11年を前に、神奈川新聞「追う! マイ・カナガワ」などオンデマンド調査報道(JOD)のパートナーシップに加盟する全国17地方紙が共同実施した読者アンケートで、「福島県の今について最も関心があること」を尋ねたところ、東京電力福島第1原発事故の廃炉作業を選択した人が最多だった。神奈川からも「廃炉作業が全ての経済、生活の復興の原点だから」(横浜市の74歳自営業男性)、「処理水を海に流す危険性を知りたい」(横浜市の75歳主婦)などの声が寄せられた。福島民報社が現状を取材した。

東京電力福島第1原発から発生する汚染水から放射性物質を取り除くALPS=2月25日撮影

 東京電力福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)は2011年3月11日の東日本大震災の地震と津波で原子炉を冷やせなくなり、全6基のうち1~3号機で炉心溶融(メルトダウン)が起き、1、3、4号機は水素爆発した。大量の放射性物質が放出された類例のない原発事故から丸11年を迎える今も、溶け落ちた核燃料(デブリ)がどこに、どれぐらいあるのか詳細には分かっておらず、廃炉の道のりは険しいままだ。

 政府と東電は、冷温停止状態となった2011年12月から30~40年での廃炉完了を目標に掲げているが、最難関となるデブリの取り出しが計画通りに進む見通しは立っていない。デブリは制御棒などの金属、原子炉格納容器のコンクリートなどと混ざり合って固まっているとみられ、その総量は1、3号機で計約880トンとの推計があるが、詳しい性状や分布状況などの全貌はつかめていない。

 デブリは極めて強い放射線を出すため、人は近づけない。調査や取り出しは遠隔操作のロボットを使うしかないが、機器開発の遅れやトラブルなどで作業工程の遅れが相次いでいる。30~40年で完全にデブリを取り出すのは困難との見方もある。

福島第1原発の廃炉 中長期ロードマップの主要工程

 東電は早ければ今秋、2号機で初のデブリ取り出しを計画している。最初は試験的に数グラムを取り出し、次第に量を増やす方針だ。デブリの取り出しは、廃炉工程表「中長期ロードマップ」で最終段階の入り口に位置付けられる。2号機はロボットによる内部の調査が始まったものの、1、3号機では取り出しのめどが立っていない。デブリをどこで、どう処分するか方針も定まってはいない。技術的助言をする原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)の山名元(やまなはじむ)理事長は「デブリを取り出す工法によって発生量が異なる。原子炉内の把握と試験的な取り出しを終えるには数年かかる」としている。

 デブリは今も水をかけて冷やしており、デブリなどに触れることで放射性物質を含んだ「汚染水」が増え続けている。多核種除去設備(ALPS)でほとんどの放射性物質を除去し、「処理水」として原発敷地内の大型タンクで保管している。政府は敷地の逼迫(ひっぱく)がデブリ取り出しなど廃炉作業の妨げになるとして、2023年春ごろから福島第1原発の沖合約1キロで放射性物質トリチウムを含んだ処理水を放出する方針だ。30~40年後の廃炉完了までに放出を終える予定だが、福島県内では漁業者を中心にあらゆる産業、市町村議会などから新たな風評発生への懸念や慎重な対応を求める声が上がっている。

「先送り症」を懸念

 福島県内59市町村議会のうち75%に当たる44議会が処理水の海洋放出への反対や方針撤回、慎重対応を求める意見書を可決している。にもかかわらず、東京電力は昨年12月、海洋放出に向けた実施計画の審査を原子力規制委員会に申請した。地元との合意形成を欠いたまま放出に突き進む動きだとして懸念の声が出ている。

 議論の先送りも続いている。廃炉の定義が定まっておらず、廃炉完了後のエンドステート(最終的な状態)を描けていない課題がある。除染作業でかき集めた放射性物質を含んだ土壌は、2045年までに中間貯蔵施設から搬出し県外で最終処分すると法律で定められているが、受け入れ先の選定は始まってもいない。

 政府、東電は合意形成不全、先送り症にむしばまれてはいないか。議論にふたをして、福島第1原発をなし崩し的に最終処分場にしてはならない。

(福島民報社)

放射性物質トリチウムを含んだ処理水 東京電力福島第1原発で発生する汚染水を多核種除去設備(ALPS)で浄化した水。ALPSで62種類の放射性物質のほとんどが取り除かれるが、水と性質が似ているトリチウムは除去できずに残る。トリチウムは自然界に存在するほか、原子炉内の核分裂などによっても生じる。通常の原発では希釈した上で海に放出している。政府は昨年4月、国内で処分の実績があり、トリチウム濃度の検知が確実だと判断して海洋放出を決定した。トリチウム濃度を国の放出基準値の40分の1未満まで水で薄め、原発の沖合約1キロ先で海底トンネルを通じて放出する。新たな風評被害は東電に損害賠償させるとしている。


 「#311jp」は、読者とつながる「オンデマンド調査報道(JOD)」パートナーシップの加盟社で実施。アンケートは多様な意見を聞き取るのが目的で、無作為抽出で民意を把握する世論調査とは異なる。「福島・東北」について「知りたい」ことを尋ね、福島民報、岩手日報、河北新報の3紙が「伝えたい」ことも交えた記事を配信し、本紙でも随時掲載する。今回の記事は福島民報社がまとめた。


 神奈川新聞社は暮らしの疑問から地域の困り事、行政・企業の不正まで、無料通信アプリLINE(ライン)で読者から寄せられた取材リクエストに幅広く応える「追う! マイ・カナガワ」(略称・マイカナ)に取り組んでいます。

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