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神奈川の戦争秘話
老舗ホテルの保存ネガ、1930年代の横浜 戦争の足音も

社会 | 神奈川新聞 | 2015年8月14日(金) 03:00

 横浜市中区のホテルニューグランドの倉庫で保管されていた約350コマのネガフィルムをデジタル処理したところ、1930年代後半に撮影されたとみられる横浜市内の日常風景が写されていたことが分かった。活気あふれる繁華街や大型船が往来する横浜港からは関東大震災から復興を果たした様子がうかがえる。ドイツ・ナチス党の訪日団を歓迎する市民の姿もあり、戦時色が高まりつつある時勢も映し出している。

かぎ十字の旗を掲げて横浜港・大さん橋に着岸するドイツの貨客船。後方に写るのは横浜税関(ホテルニューグランド所蔵)

 フィルムはモノクロで、ホテル事務所の倉庫の奥で箱に入れられていた。2008年に80年史を発行するため、未公開資料を探していて発見した。神奈川新聞社アーカイブ室がこのほど、フィルムをデジタル処理して復元した。

 日独親善のため1938年8月に来日したナチス党青少年組織「ヒトラー・ユーゲント」のフィルムには、出迎えた女性が「大日本国防婦人会」のたすき姿で写っていた。歓迎昼食会が開かれた宴会場には、かぎ十字のナチス旗と日の丸が掲げられていた。

1938年に来日したヒトラー・ユーゲントの歓迎昼食会。ニューグランドの宴会場レインボーボールルームにはナチス・ドイツの旗と日の丸が飾られていた(ホテルニューグランド所蔵)

 若い女性でにぎわう馬車道の映画館前や本牧にあった海水浴場、県庁舎から俯瞰(ふかん)した市街地も写る。大勢の見送りを受けて出港する日本郵船の大型客船「龍田丸」(1万6955トン)の姿もある。

 同ホテル非常勤取締役の野村弘光さん(82)によると、撮影者は当時チーフ・バーテンダーだった故・佐賀順次郎さん。英文のPR誌「ニューグランド・カメラ・ニュース」の撮影と編集を担当しており、複数の号にフィルムと同じ写真も掲載されていた。

 佐賀さんについては「顔が広く、仕事熱心。ライカのカメラを3台持っていて、ホテルでの撮影だけでなく、子どもから風景まで幅広く撮影していた。当時の写真は残っていないと思っていただけに見つけたときは驚いた」と振り返る。

 横浜市史資料室の羽田博昭主任調査研究員によると、1930年代後半の横浜は大震災から復興を遂げて貿易が盛んになり、多くの外国人が訪れた最も華やかな時代だった。1945年5月29日の横浜大空襲で市街地が壊滅し、当時の写真はほとんどが消失したという。「詳細な情報を読み取ることができるフィルムが大量に残されている意義は深い。空襲で失われる以前の暮らしぶりをうかがうことができる貴重なフィルム群だ」と評価する。

 ◆ホテルニューグランド 横浜港近くの中区山下町に1927年開業。日本を代表するクラシックホテルの一つで、戦前は作家の大佛次郎が定宿とし、戦後はダグラス・マッカーサー連合国軍総司令部(GHQ)最高司令官が執務室としたことで知られる。

 
 

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